クリスティーズが、今年アートとラグジュアリー・カテゴリーの総売上高を発表。62億ドル(約8880億円)と見込む数字は、コロナ前の2019年と比べて7パーセント上回っている。
この結果を昨年と比べると、昨年個人コレクションとしては史上最高額を記録し、合計16億2000万ドルの売上高を達成したポール・G・アレンのコレクションセールの数字を含めれば、25パーセント減。同セールの記録的な数字を除けば、7パーセント減となる。
同社CEOのギヨーム・セルッティはオンラインで行われた記者会見で、次のように話した。「今年はパラドックスのような年だった。政治的、経済的にマクロ環境は非常に厳しく、アートマーケットを含むすべてのビジネスがその影響を受けている。そのため、2023年の総売上高が2022年に比べて減少することは、予想されたことであり、驚くことではない」。
全体的な数字が減少しているにもかかわらず、同社のプライベートセールによる売上高は昨年比5パーセント増の12億ドル(約1720億円)と見込む。全売上高の20パーセントに相当しており、昨年の14パーセントより大幅に伸びている。
この結果についてセルッティは、「人々がより慎重になり、オークションに対するコンフィデンスが低くなるとき、一般的にはプライベートセールが好まれる」と話す。また彼によれば、今年同社の最高取引額もプライベートセールによって達成されたものであり、「1億ドルをはるかに超えている」という。
地域別に見れば、米州、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)、APAC(アジア太平洋地域)は、それぞれ25億7100万ドル、16億5000万ドル、8億500万ドルのオークション総売上高を記録。各地域のバイヤーによる寄与率は、41パーセント、31パーセント、28パーセントを占めている。
同社APAC社長であるフランシス・ベリンは、「アジアのコレクターの活動には、つねに2つの見方がある」とし、次のように述べている。「まずひとつ目は、アジア人コレクターによる購入を見ること。ご存知のように、アジア人コレクターは、購入する商品の約半分をアジアのセール会場以外で購入している。だから、28パーセントの寄与率は、アジア人コレクターのオークションへの参加が非常に堅調であったことを示している」。
また、APACで達成された8億500万ドル(約1152億円)のオークション総売上高について、ベリンはこう続ける。「これは昨年に比べてわずか4パーセントの差。だから、2023年を通して、地域的に見ても国際的に見ても、アジアでは堅調で持続的な購入が続いていると自信を持って言えるだろう」。
今年、中国本土の景気減速が懸念されるなか、ベリンは「同国からの参加が非常に多いのは間違い」と強調する。ベリンによれば、今年の新規顧客による購入額のうち、54パーセントがアジア顧客によるもので、その半分以上となる30パーセントが中国本土からのもの。また、世界のミレニアル世代のバイヤーの支出額のなかでも、66パーセントがアジアからのもので、36パーセントが中国本土のバイヤーによるものだという。
同社は、2024年にAPAC本社を香港セントラルの新しい超高層ビル「The Henderson」に移転する予定。ベリンは来年に向けて「慎重に楽観的な見方」を示しながら、同地域のさらなる成長を期待している。