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老舗アートフェア「TEFAF」が乗り出すキュレーター育成。「マーケットとアカデミズムのギャップを埋める」

オランダの老舗アートフェア「TEFAF」(テファフ、The European Fine Art Foundation)が、これまでにない試みに乗り出した。それが、マーストリヒト大学と連携したキュレーターコースだ。マーケットとアカデミズムのあいだには距離感があるとされているが、この取り組みはそのギャップ解消を狙うという。キーパーソン2人がその実施背景と目的を語った。

文=貝谷若菜

「TEFAF マーストリヒト 2023」より、Kunsthandel A.H. Biesブース Photo by Loraine Bodewes

アート界と市場にまつわるあらゆるプログラムを用意

 TEFAF(テファフ、The European Fine Art Foundation)とは、1988年に設立されたファインアート、アンティーク、デザインを扱うNPO団体で、7000年の美術史を網羅するTEFAF マーストリヒトと、モダンとコンテンポラリーアートおよびデザインに焦点を当てたTEFAF ニューヨークの2つのアートフェアを運営している。TEFAFマーストリヒトは、展示作品の真正性を重視する姿勢が高く評価されているフェアで、コレクターが安心して作品を購入できるよう、15カ国以上から集まった約190人の学者や審査員による審査チームが設置されている。そのためTEFAF会期の会場には毎年世界各国から何千もの美術品コレクターが集い、自らのコレクションの拡大を行っている。 

「TEFAF マーストリヒト 2023」より Photo by Alixe Lay

 そんなTEFAFが、第37回を迎える2024年、新たにマーストリヒト大学との連携で5日間にわたる10名限定のキュレーターコースの実施を発表した。当プログラムを通じて、両機関は美術館キュレーターがアカデミアの枠組みを超えて、実践的にアート市場を学ぶ機会を提供する。プログラムはフェア会期の3月9日から14日(7日と8日は招待のみ)に先立って、3月5日から10日に会場近くのマーストリヒト大学にて実施される。 

 マーストリヒト大学は、2017年にロンドンの王立芸術院(Royal Academy of Arts)と共同で文化リーダーシップ・エグゼクティブ修士課程(Executive Master in Cultural Leadership Programme)の認定を受け、芸術・文化分野におけるエグゼクティブ教育を提供するパイオニアとなっている。この修士課程プログラムは、現代の文化を担うリーダーを育成しすることを目的とし、ビジネス・経済学部のMBAとのデュアルディグリーの取得も可能である。

 今回のTEFAFとマーストリヒト大学のコラボレーションを率いるのは、マーストリヒト大学文化リーダーシッププログラム・エグゼクティブ修士課程の創設者であり、金融学部教授のレイチェル・パウナルと、TEFAFコレクター&ミュージアム部門責任者のポール・ヴァン・デン・ビーセンである。 

 TEFAFキュレーターコースでは、デューデリジェンスや市場調査、美術法の実践的な側面、社会的影響や外部資金調達の倫理、機関以外の借用、贈与、取得などアート界と市場にまつわるあらゆる側面を網羅したプログラムが用意されている。講師にはArtTacticの創設者であるアンダース・ペターソン氏(アート市場の動向)、ナショナル・ポートレート・ギャラリーの開発部長のサラ・ヒリアム氏(交渉と資金調達)、マーストリヒト大学のヒルデガード・シュナイダー教授とドナ・イェーツ博士(美術法と規制)をはじめとし、世界的なキュレーター、TEFAF審査委員会のメンバー、そして各専門分野の著名なアートディーラーなどを迎える。コース期間中、参加者は上級審査員とマッチングされ、一般公開前のフェア会場を回りながら課題や疑問について専門家に尋ねるためのメンター・セッションも用意されている。他にも、コレクターズ・プレヴュー、収蔵品に焦点を当てた美術館への訪問及び、 CODARTなどの周辺イベントへの参加機会も提供される予定だ。 アカデミアとアート市場の融合を実現するこのユニークなプログラムについて、その特徴や背景にあるビジョン、意図に迫るべく、レイチェル・パウナルとポール・ヴァン・デン・ビーセンに取材を行った。

「TEFAF マーストリヒト 2023」より Photo by Alixe Lay

アートの学術的な側面と市場側面のギャップを埋める

──まず最初に、TEFAFとマーストリヒト大学のキュレーター・コースにおけるコラボレーションのきっかけをお聞かせください。

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