2020.3.26

約25万ユーザーを記録。アート・バーゼルのオンライン・ビューイング・ルームがもたらした効果とは?

今年の「アート・バーゼル香港2020」の開催中止を受けて設立されたアート・バーゼルのオンライン・ビューイング・ルームが、3月25日に閉幕した。235のギャラリーが参加し、世界中から25万以上の訪問者を集めた初回の様子を振り返る。

アート・バーゼルのオンライン・ビューイング・ルームより、デイヴィッド・ツヴィルナーが展示したジェフ・クーンズの《Gazing Balls(Botticelli Primavera)》(2017-20)
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 今年の「アート・バーゼル香港2020」の開催中止を受けて設立されたアート・バーゼルのオンライン・ビューイング・ルーム。3月25日に閉幕した初回では、235のギャラリーが参加し、世界中から25万以上の訪問者を記録した(2019年のアート・バーゼル香港では5日間の会期中で過去最高となる8万8000人が来場)。

 今回のオンライン・ビューイング・ルームでは、2000点以上の作品が展示され、作品の総額は2億7000万ドル(約300億円)を超えると推定。様々な国で旅行制限がかかっている状況下、ギャラリーはこのプラットフォームを通し、新しいコレクターの開拓ができ、既存のクライアントとふたたび連絡をとることもできたという。

アート・バーゼルのオンライン・ビューイング・ルームより、オオタファインアーツが展示した草間彌生の《LIFE SHINES ON》(2019)

 アート・バーゼルのグローバル・ディレクター、マーク・シュピーゲルは、「多くの中小規模のギャラリーにとって、私たちのプラットフォームは世界中の新しい、潜在的なクライアントとつながる機会を提供した」とコメント。

 香港の責任者であるディレクター・アジアのアデリン・ウーイは、「アジア各国のギャラリーからのフィードバックはとても強烈だった」とし、「オンライン・ビューイング・ルームは、アート・バーゼル香港でギャラリーが待ち望んでいた対面での会話や交換に取って代わるものではないが、私たちの取り組みは、コレクターとのつながりを維持し、多くのギャラリーが非常に困難な時期に、新しい関係を築くためのプラットフォームを提供した」と肯定的に評価する。

 今回のオンライン・ビューイングでは、それぞれのギャラリーは最大10点の作品が展示可能で、会期中には、リアルなアートフェアではよく行われる展示替えもできた。

アート・バーゼルのオンライン・ビューイング・ルームより、デイヴィッド・ツヴィルナーが展示したネオ・ラオホの《Die handreichung》(2019)

 デイヴィッド・ツヴィルナーは「On Painting:Art Basel Online」をテーマにオンライン展示を行い、同ギャラリーのオンライン展示で過去最高額となる1600万ドル(約17億7000万円)の作品を出品。18日のVIPプレビューでは、マンマ・アンダーソン、ルーカス・アルーダ、マルレーネ・デュマス、リュック・タイマンス、ノア・デイビス、劉野による6つの絵画作品を販売。そのうち、デュマスとタイマンスの《Like Don Quixote》(2002)と《Tree》(2019)は、それぞれ260万ドル(約2億9000万円)と200万ドル(約2億2000万円)の高額で売れた。

 ハウザー&ワースは初日で、ヨゼフ・アルバース、ジェニー・ホルツァーの絵画、ピピロッティ・リストのビデオインスタレーションを14万〜60万ドル(約1550万〜6600万円)の価格で販売。また、同ギャラリー自身のオンラインプラットフォームでは、ポール・マッカーシーやエドワード・クラーク、ギュンター・フォルグによる8点の作品も5万〜30万ドル(約550万〜3300万円)の価格で売れた。

アート・バーゼルのオンライン・ビューイング・ルームより、ハウザー&ワースが展示したジョン・チェンバレンの《CONTINUOUSENTANGLEMENT》(2001)

 すぐに独自のオンライン・プラットフォームを有する同ギャラリー。創設者のひとりであるイワン・ワースは、「我々自身のプラットフォームとアート・バーゼルのプラットフォームの両方を通じて、アジアからより多くの参加が得られており、それは我々のより高い価値のある作品(の販売)にも自信を得た」と語る。

 新型コロナウイルスの感染が世界中に急速に拡大している背景下、アート・バーゼルは6月のバーゼルでのアートフェアを「秋に延期することを真剣に検討している」という。またオンラインプラットフォームについては、今後数ヶ月にわたりさらに投資して開発する方針を示している。

 ウイルスの蔓延により、美術館・博物館が休館し、アートフェアや芸術祭が相次ぎ延期・中止するなか、オンラインコンテンツはこれまで以上の発達が余儀なくされている。