「森アートアワード2026」初代グランプリに片山真理が選出【2/2ページ】

 グランプリに選ばれた片山真理は1987年生まれ。自身の身体を制作の核に据え、写真と手縫いによるオブジェを組み合わせた表現を展開してきた。身体を生きた彫刻であり、社会を映し出すレンズとして位置づけ、「自然」「人工」「正しさ」といった規範的価値観を問い直す作品を発表している。また、「選択の自由」を掲げた「ハイヒールプロジェクト」を通じ、義足用の特注ハイヒールを制作・着用しながら、歌手やモデル、講演活動など多方面で発信を続けてきた。これまでにテート・モダン「Performer and Participant」(2023)、ヨーロッパ写真美術館「home again」(2021)、第58回ヴェネチア・ビエンナーレ(2019)など、国際的な舞台で作品を発表してきた。

 選考理由について片岡は、とりわけ近作シリーズ「Tree of Life」を挙げ、「自己のポートレートから出発しながら、身体が自然の空間へと溶け込むような拡張を見せ、さらなる飛躍を予感させた」と評価。また、「片山にしか成し得ない力強いイメージメイキングと明確なコンセプチュアルな枠組みの融合が、文化的・社会的境界を越えていく可能性を示している」と述べ、国際的文脈における展開への期待を示した。

今回の選考について語る片岡真実

 授賞式で片山は、「この賞はたんなる受賞にとどまらず、メッセージを届ける機会をいただいたことに意味がある」と語った。制作の根底にある問いについては、「多様な役割を抱えながら、私たちはどう生きていけばよいのかを問い続けてきた」と振り返る。ビーズやパールを用いた手縫いのオブジェは触れると音を奏でるが、「その音は人の存在のエコーのようなもの。どのような存在も決して消えることはなく、私たちは決してひとりではないと信じられる」と述べ、「努力はきっと報われると伝えたい」と締めくくった。

 森現代芸術財団は、「キュレーター・レジデンス・プログラム」と本アワードを活動の2本柱とし、日本の現代美術を国際的に発信する新たな枠組みを構築している。森京子は「第1回受賞アーティストの門出をともに見守り、今後の活躍を応援してほしい」と呼びかけた。

 初開催となった森アートアワードは、日本の中堅世代に焦点を当て、国際的視座からその実践を評価する制度として始動した。片山真理の受賞は、その第一歩を象徴する出来事といえるだろう。

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