木造モダニズム建築の先駆け。国登録有形文化財 三岸好太郎・節子の住宅アトリエが大規模改修へ【2/2ページ】

何がどう変わる?

 今回、この三岸家住宅アトリエが、大規模改修によって生まれ変わる。主体となるのは、インフラ・建物の耐震補強事業に取り組む株式会社キーマンだ。

 24年7月に三岸家住宅アトリエと隣接する集合住宅「カーサビアンカ」を継承したキーマン。同社は21年より「REDO事業」(耐震補強+再生運用プロジェクト)に取り組んでおり、今回のプロジェクトもその一環だ。同社代表の片山寿夫はこう語る。「今回の改修は、国登録有形文化財を“守る”だけでなく、“活かす”ことを目的としています。三岸家住宅アトリエの価値を継承しながら、耐震性能・環境性能を現代レベルに高め、積極的な活用によって収益と循環を生み出す“活きた文化財”へと進化させることにあります。これまで守られてきた築91年を迎える三岸家住宅アトリエを“過去の遺産”ではなく、私たちが継承し、“未来の資産”として新たな運営方法で次の世代へ引き継いでいく、過去・現在・未来をつなぐ建築物として次の50年へ歩み続けられるようにしたいと考えています」。

 改修コンセプトは「シン・木造モダニズム」。創建当時の意匠を現代の技術で再解釈するという方針のもと、様々な改修を行う。

 具体的には、現代の防火・耐震基準に適合した新たなコーナーウィンドウを設置。これにより、この建築が本来持っていた特徴が復活する。コーナーウィンドウを覆っていた応接室は、隣接する集合住宅カーサビアンカの1階に建具・造作・内装を移設。屋根も現在の寄棟屋根を撤去し、本来の直方体形状を復活させるという。

右に見えるのが、本来はコーナーウィンドウだった窓 撮影=筆者
内部空間 撮影=筆者
中庭から見た応接室部分 撮影=筆者
右がカーサビアンカ 撮影=筆者

 改修後の三岸家アトリエ住宅とカーサビアンカ1階は「REDO鷺ノ宮」として、美術や建築関連の書籍を閲覧・展示できる空間となり、企画展示やワークショップ、イベントなどに対応する文化拠点として運用。カーサビアンカの2〜3階の4戸は共同住宅となる。

 たんなる復原ではなく、現在の技術を融合することで、動態保存+積極活用を目指すこのプロジェクト。完成時期は2026年秋頃が予定されている。