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2023.2.19

バウハウス閉校から90年。ナチスが奪った表現の現在地点とこれから

2023年、ドイツ・ヴァイマールに生まれた革新的な総合造形学校「バウハウス」は閉校から90年を迎えた。ナチスが奪い去った表現がいかにして今日まで続いてきたのか。閉校90年を契機に振り返るとともに、バウハウス思想の現在地点と、これからのあり様について考察する。

文=深川雅文

バウハウス・デッサウ校舎 撮影=Eiji INA
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バウハウス閉校から90年。ナチスが奪った表現の現在地点とこれから

「バウハウス」とは、1919年に建築家のヴァルター・グロピウスによってドイツ・ヴァイマールに創設された総合造形学校だ。「建築」を基軸にした総合的な造形芸術教育を実践し、近代デザインの形成に大きな影響を与えたことでも知られている。

 2019年はその開校100周年を迎え、ドイツを中心に世界中で記念のイベントが開催された(*1)。それから4年後の2023年は閉校から90年を数える。改めて、閉校という視点からその過去と現在を照らし出してみよう。

365 Days of Bauhaus: Centenary Calendar 2019. Published by 100 years of bauhaus / Office of the Bauhaus Association 2019

 閉校の経緯はこうである。

 1933年1月、国民社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)の党首、アドルフ・ヒトラーが首相に任命されたことで、一党独裁体制が成立。第三帝国(ナチ党統治下のドイツ)誕生の契機となる。これにより、開校直後からつねに右翼からの批判にさらされていたバウハウスへの弾圧は最高潮に達することとなる。

 同年4月にベルリン警察とナチス親衛隊が共産主義関連文書の押収を理由に、最後の拠点となったベルリンのバウハウスに家宅捜索に入ったことで、建物が封印され授業の継続が困難となる。その後7月、バウハウス教授会は同校閉鎖を決定し、3代目校長、ミース・ファン・デル・ローエの名で秘密警察ならびに担当省に通告。そして8月10日、学生たちにその報告がなされ、誕生から14年間続いたバウハウスは終焉を迎える(*2)。

バウハウスはなぜ閉校したのか。ナチスが蹂躙したものとは