丹下健三の「旧香川県立体育館」、再生委員会が県の解体姿勢に疑問符。「直ちに崩壊する懸念なし」【2/3ページ】

県の懸念点に疑問符

 県側が解体の根拠として挙げているのが建物の耐震性だ。しかし再生委員会は、精緻な耐震診断の結果、同建築が直ちに崩壊する、あるいは液状化で沈下する危険性はなく、早急な解体は不要であると強調。同建築のプレストレス構造や吊構造の屋根が、構造的な強度を保っている理由であり、国立代々木体育館の建設にも関わった構造家・斎藤公男も「少しの補強で十分に使える。すぐに壊すというのはありえない。不安神話は払拭されるべき」と語る。また建築家・青木茂も「むしろ解体するほうが危険性がある」と指摘。県が主張する、屋根の崩壊による緊急輸送路を塞ぐ危険性について、あらためて疑問が呈されたかたちだ。

 また県側は再生委員会が示す再生事業の主体性についても懸念を示しているが、今回の会見では投資ファンドからホテル運営までを手がける株式会社Stapleが事業を主導することが明らかにされた。現時点では宿泊機能と大規模なブックラウンジを組み合わせた「ブックラウンジホテル」案と、宿泊施設のみの「ホテル」案が示されており、初期コストはそれぞれ約30億円、約60億円、純利益は3年目以降に1.2億円超、4億円超を見込む。また展示・商業空間の分野における大手乃村工藝社も支援に加わり、これまで手がけてきた様々な再生事業のノウハウを提供する体制だ。