今年2月、香川県庁舎の旧本館と東館(以下、県庁舎東館)が国の重要文化財に指定された。戦後に建てられた庁舎としては全国初となる。
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県庁舎東館は、建築家・丹下健三の設計により1958年に竣工。柱や梁の軸組構造などにより、日本の伝統的な意匠を鉄筋コンクリートで表現している。県民に開かれた庁舎とするために1階には執務室がない。ピロティやロビー空間は県民のためのオープン・スペースとして、平日は誰もが出入り可能となっており、また香川県出身の画家、猪熊源一郎による壁画《和敬清寂》も設置されている。
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本建築は世界からも高く評価されており、近代建築の保存に取り組む組織「DOCOMOMO(モダン・ムーブメントにかかわる建物と環境形成の記録調査および保存のための国際組織)JAPAN」によって、「文化遺産としてのモダニズム建築20選」にも選出された。
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今回は建築のみならず、庁舎とともに制作された南庭の石灯籠や受付カウンター 、イスなどの家具類57点も重要文化財の一部に指定。これらも建造物と一体として重要なものとみなされた。
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県庁舎東館は2019年に耐震工事を完了。建物と地盤とのあいだに免震装置を追加する工事を行い、防災拠点となる施設として十分な耐震安全性を確保している。なお、この工事において「国土交通大臣賞耐震改修優秀建築賞」 を受賞した。
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近年、世田谷区民会館や原美術館、宮城県美術館、中銀カプセルタワービル、東京海上日動ビルなど、様々な近代建築が解体またはその危機にさらされている。今回の永続的な保存に向けた試みと重要文化財への指定は、国内建築の保存におけるひとつの指標となるだろう。