富山・魚津市の「ホテルグランミラージュ」の9階に、温浴施設「スパ・バルナージュ」が4月27日にオープンする。立山連峰や富山湾のパノラマとともに舘鼻則孝のアートワークを楽しむことができる施設だ。
舘鼻は1985年東京都生まれ。2010年に東京藝術大学美術学部工芸科染織専攻を卒業。遊女に関する文化研究とともに、友禅染を用いた着物や下駄の制作をする。おもな個展に「呪力の美学」(岡本太郎記念館、2016)、「It’s always the others who die」(ポーラ ミュージアム アネックス、2019)、「NORITAKA TATEHANA: Refashioning Beauty」(ポートランド日本庭園、2019)、「Distance」(山口県立萩美術館・浦上記念館、2023)など。ほかにもグループ展への参加や、2016年3月にはパリのカルティエ現代美術財団で文楽公演を開催するなど幅広い活動を展開。作品はメトロポリタン美術館、ヴィクトリア&アルバート博物館などに収蔵されている。
今回、舘鼻が手がけたアートワークは、1センチ角のセラミック製タイルを無数に配置することで完成されたモザイク壁画。舘鼻の代表的な絵画シリーズ「Descending Painting」を起点に、施設から眺望できる立山連峰の景色が山側と海側の浴室に描かれている。
立山連峰が見える山側の浴室と富山湾を一望できる海側の浴室では、異なる図が表現されており、山側は太陽が描かれた鮮やかな色彩の図案、海側は寒色を基調とした荒々しい雷雲の図案となっている。さらに浴室上部には立山の山容が表されており、登ると極楽往生が叶うとされた立山信仰に関する文化的背景を汲み取ったアートワークが展開されている。
舘鼻の曽祖父と祖父は、戦後まもなく富山から上京し、新宿・歌舞伎町で銭湯「歌舞伎湯」を営んでいた。本施設のアートワークは、「歌舞伎湯」の浴室全面に施されていた壮大なモザイク壁画も発想源になっているという。
舘鼻は今回のプロジェクトについて、次のコメントを寄せている。
本プロジェクトでは、私のルーツでもある富山の温浴施設にアートワークを設置したいというご依頼をいただき、すぐに「歌舞伎湯」のモザイク壁画を思い出しました。このような機会に縁を感じ、本作には通常のペインティングではなくモザイク壁画を採用させていただきました。
地域の人に愛され、その土地に根差した作品になることが本作のようなパブリックアートの意義だと感じています。単に眺めるだけではなく、本作は体感することができるアートワークでもあります。富山を訪れる際には、是非お立ち寄りいただければ嬉しく思います。(プレスリリースより)