これまで皇居に隣接するかたちで運営されていた東京国立近代美術館工芸館が、10月25日より「国立工芸館」として金沢で新たなスタートを切る。そこで気になるのが、これまで使用されていた竹橋の建築(以下、旧東近美工芸館)の行方だ。
そもそも旧東近美工芸館の建物は、明治期の1910年に陸軍技師・田村鎮(やすし)の設計により建てられた近衛師団司令部庁舎。重厚な赤レンガの外観が特徴的で、72年には国の重要文化財に指定されている。
旧東近美工芸館はこの建物を美術館仕様に改修したもので、外観および玄関、広間の保存修理工事と、谷口吉郎による展示室の設計に基づく内部の改装によって、77年に東京国立近代美術館工芸館として開館した。
しかしながら、2020年には最後の展覧会「パッション20 今みておきたい工芸の想い」をもっていったんその役割を終え、工芸館自体は「国立工芸館」として、金沢に移転・開館する(なお国立工芸館も国の登録有形文化財である「旧第九師団司令部庁舎」と「旧金沢偕行社」を活用したものとなる)。
この旧東近美工芸館は今後、どうなるのか? 現在、建物を所管するのは独立行政法人国立美術館。同法人によると、旧東近美工芸館は現在「東京国立近代美術館分室」として運用されているという。今後も東京国立近代美術館が使用していく予定だが、具体的な活用方法などは「検討中」との回答だ。100年以上の歴史を持つこの建築が、一般に開かれた施設として活用されることを期待したい。