2020.4.9

メガギャラリー「ペース」のCEOが新型コロナに感染。アート界の未来について「持続不可能な実践を再検討」

世界中に複数のスペースを持っているメガギャラリー「ペース」の社長兼CEOであるマーク・グリムシャーが、新型コロナウイルスに感染していたことがわかった。

マーク・グリムシャー Courtesy of Pace Gallery

 ニューヨーク・チェルシーにある美術館レベルの旗艦店をはじめ、ロンドン、香港、パロアルト、ソウル、ジュネーヴなどに9つのギャラリーを運営しているメガギャラリー「ペース」。その社長兼CEOであるマーク・グリムシャーが、新型コロナウイルスに感染していたことを発表した。

 グリムシャーは「ARTnews」に寄稿した記事で、3月4日より悪寒や咳、体の痛みなど新型コロナウイルス感染症の症状が現れ、38.9度の発熱や発汗、胸の焼灼感などが続いたことを明らかにした。

 妻と2歳未満の息子とともに新型コロナウイルスの検査を受け、一度陰性の結果が報告されたが、その後検査を再実行した結果、息子が陽性だと判明。2回目の検査結果を待つうちに、グリムシャーは激しい咳や息切れを経験して症状が深刻化したという。

 ペースでは、12日にニューヨークのスペースをクローズし、翌日よりスタッフの在宅勤務をスタート。ギャラリーや美術館の展覧会、アートフェア、オークションなどが相次ぎ中止・延期しているなか、同ギャラリーは、オンライン・ビューイング・ルームで展覧会を開催するなどの試みを始めた。

 発症から32日後、症状が緩和したグリムシャーは、新型コロナ危機がアート界にもたらした変化について、次のようにコメントしている。

 ギャラリストとして、私たちは未来の仕事をしている。展覧会について考えてスタジオを訪問する、アートフェアのブースについて考えてクライアントを訪問する、新しい本やパフォーマンスについて学芸員チームと打ち合わせするなど。現時点では、私たちはいまのビジネスに参加する以外に選択の余地がない。そして、価格設定、過剰なプロモーション、旅行、投機家の最低の本能への執拗なケータリング、膨れ上がる経費、相互に破壊的な競争、設計されたオークションの記録、燃やすための資本の必死の探索(あなたがそれを燃やすことができることを証明するため)など、持続不可能なプラクティスの実行可能性を再検討しなければならない。

 また、3月にオランダで開催されたアートフェア「TEFAFマーストリヒト」は、出展者のひとりが新型コロナウイルスに感染したために急遽閉幕。その後、数十人の出展者や来場者の感染が続々と報告された。

 リアルな展覧会やアートフェアの開催がほぼ不可能となった現在では、デイヴィッド・ツヴィルナーハウザー&ワースなどアート界の有力なプレイヤーたちは積極的にオンラインプラットフォームに注力しだしている。グリムシャーが言うように、アート界はこれを機に変わらざるをえないのかもしれない。