女性館長は16%。日本の男女格差、美術界でも顕著

世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表している「ジェンダー・ギャップ指数」の2019年版において、日本は調査対象153ヶ国中121位と過去最低を記録した。この男女格差は、美術館でも見て取れる。

 

イクオリティ(平等)を示すGagoshのストリート・アート 出典=Gagoshのウェブサイト(http://gagosh.org/Equality/)より

 世界経済フォーラム(WEF)が12月17日、2019年の「ジェンダー・ギャップ指数」を発表した。調査対象153ヶ国中、日本は過去最低となる121位を記録。前年の110位からさらにランクを落とし、中国(106位)や韓国(108位)などのアジア主要国と比較しても低い水準となっている。

 このジェンダー・ギャップは、美術界にとっても他人事ではない。美術手帖では2019年6月より、このジェンダー・ギャップに端を発した企画「ジェンダーフリーは可能か?」をスタート。日本の美術界におけるジェンダーバランスを取り巻くデータや歴史を整理し、インタビューや論考を通して、「ジェンダーフリー(固定的な性別による役割分担にとらわれず、男女が平等に、自らの能力を生かして自由に行動・生活できること)」のための展望を示してしてきた。

 そんななか、ここではとくに日本の美術館のジェンダー・ギャップに注目したい。

 美術手帖は19年2月に全国の美術館55館(国公立、私立、独立行政法人)にアンケートを実施。館長、学芸員、総務課職員の男女比を集計した。

全国美術館における館長・職員の男女比

 顕著なのは、学芸員と館長の男女差だ。学芸員では女性74%:男性26%なのに対し、館長となると女性16%:男性84%と数字が逆転する。この数字について、東京大学情報学環特任准教授・竹田恵子は「統計データから見る日本美術界のジェンダーアンバランス。シリーズ:ジェンダーフリーは可能か?(1)」のなかで、次のように指摘している。

 全国的な現象であるが、末端には女性比率が大きく、地位が高くなると男性比率が大きくなる傾向が表れている。比較対象として十分ではないが、日本の主要企業におけるCEOの女性比率は、5パーセント以下である 。しかし、学芸員の女性割合の大きさを考えれば、館長クラスのジェンダー比率も再考すべきであろう。ここにも、女性のキャリア形成をめぐる障壁が存在することが指摘できる。

 この傾向がすぐに変わることは予想できないが、その兆しとして注目すべきものはある。その一例が、女性の新館長森美術館の新館長に片岡真実が就任することだろう。

 片岡は同館副館長兼チーフ・キュレーターを経て、2020年1月1日に館長に就任する。就任にあたって片岡は同館の今後の指針として「地域コミュニティとのつながりの強化」「ダイバーシティの強化」「実体験の重要視」を掲げており、秋には「アナザーエナジー展:創造しつづける女性アーティスト(仮題)」(10月1日〜2021年1月3日)を開催する。

 同じく六本木の国立新美術館では、逢坂恵理子が10月1日付ですでに新館長に就任。現在は横浜美術館館長と兼務だが、2020年4月からは国立新美術館の専任館長となる。加えて、20年に開館するアーティゾン美術館では笠原美智子が副館長を務めるなど、新たな動きも見えている。

 こうした美術館を震源地に、美術館業界全体に構造変化は起こるのか。日本全国の美術館394館(国立10館、公立249館、私立135館)が加盟する全国美術館会議は毎年「会員名簿」を更新しているが、様々な統計データを出すことにも期待したい。

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