昨年イギリス・ウェールズ地域に「季節の挨拶」を発表し、今年東京に出現した真贋不明の「ネズミの絵」で大きな話題を呼んだ覆面アーティスト・バンクシー。その神出鬼没のバンクシーが、自身のInstagramで新しい映像を発表した。
この映像では、絵画の行商人が集まっているイタリア・ヴェネチアの街に、正体不明の男性がイーゼルと複数のキャンバスを設置する様子が映し出される。次々と姿を現す絵画。組みあわさった9枚の絵画には、ヴェネチアの街の風景や、運河を漂っている白いクルーズ船が描かれており、イーゼルには「Venice in oil(油絵の中のヴェネチア)」という看板が掛けられている。
バンクシーは、この投稿でこうコメントしている。「ヴェネチア・ビエンナーレで私の屋台を設置します。世界で最大かつもっとも権威のあるイベントではありますが、なんらかの理由で私は招待されたことがありません」。
作品の前を通過する人々が興味深そうに(あるいは疑しそうに)目を向けるなか、イタリアの警察は、「あなたは去らなければなりません。ここにとどまることはできません」と告げながら、男性に屋台を撤去することを命じる。そして、男性は荷造りし、別の場所に移動。その背景には、キャンバスに描かれた巨大な白い船が汽笛を鳴らしている。
本作の《Venice in oil》というタイトルは、「石油の中のヴェネチア」も意味する。約26万人の人口に対し、毎年2200万人以上の観光客が訪れるヴェネチア。本作は、これらの観光客とともにやってくる、石油などの化石燃料を大量に消費する巨大なクルーズ船がヴェネチアにもたらす環境問題を皮肉っているのではないだろうか。