ミヤギフトシによる「American Boyfriend」プロジェクトが小説に。自身初の小説集『ディスタント』をチェック

自身の経験や記憶をもとに、国籍や人種、アイデンティティをテーマとした制作を行うミヤギフトシ。そのプロジェクト「American Boyfriend」が、小説集『ディスタント』として刊行される。同書は、ミヤギにとって初の小説作品となる。

ミヤギフトシ『ディスタント』(河出書房新社、2019)書影

 ミヤギフトシは1981年沖縄県生まれ。東京、沖縄、ニューヨークにおける自身の経験や記憶と向き合い、国籍や人種、アイデンティティをテーマに制作を行ってきた。

 そんなミヤギによる初の小説集『ディスタント』が、河出書房新社から刊行される。本書では、ミヤギが2012年からライフワークとして継続する「American Boyfriend」プロジェクトを小説化。同プロジェクトは、沖縄の政治的・社会的な問題と自身のセクシャリティを交錯させながら、写真や映像、展覧会、イベントなどを通して詩的な物語を立ち上げようとするものだ。 

 本書に収録されるのは、17~18年に『文藝』(河出書房新社)に掲載され話題となった『アメリカの風景』『暗闇を見る』『ストレンジャー』の3本をブラッシュアップしたもの。メロドラマの構造を用いつつ、アメリカで触れたクィア・カルチャー、沖縄出身者として見る日本、そしてアメリカとの関係、音楽・ゲーム・美術・文学の引用をミックスした、新しい「青春小説」とも言える内容となっている。

 本書では「沖縄において、沖縄人男性と米国人男性が基地のフェンスを越えて恋に落ちることは可能だろうか。それぞれの言葉は翻訳され、誤訳される。隔てられた場所でふたりが見るそれぞれの風景はどう違い、どれだけ近づけるのか」をテーマとする「American Boyfriend」プロジェクトの世界観を、瑞々しい物語の数々から感じ取ることができるだろう。

 >>ミヤギフトシによる連載はこちらから。

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