アメリカ・シカゴの建築家やデザイナーのグループである「New World Design」が、現在のアメリカの政治情勢に対するプロジェクト「U.S.-Mexico Border Wall: A Study in Absurdity(アメリカ−メキシコ国境の壁:不合理の研究)」を発表した。
これは、トランプ大統領が提案したアメリカとメキシコの国境沿いに壁を建設する計画を皮肉るもので、フロリダ州にあるトランプ大統領の別荘「マー・ア・ラゴ」の周辺やメキシコとの国境に柵を立ち上げるというプロジェクト。高さ約9メートルのピケットフェンスをイメージした本プロジェクトは金色で仕上げられており、トランプ大統領が主張する「古き良きアメリカ」のイメージを反映している。
「トランプ大統領は共和党候補だったときから国境の壁を主張してきました。私たちはトランプ大統領の発言を振り返り、そのなかからもっとも非合理的なものを選び、それを建築に変えたのです」と、同社社長ジェフリー・ロバーツは語る。
トランプ大統領は現在、国境の壁を建設するために連邦予算から57億ドルの資金拠出を求めている。しかし、これをめぐって民主党との対立が続き、連邦予算で運営される美術館などの政府機関の一部は閉鎖されている状態だ。トランプ大統領はこの事態を打開するため、国家緊急事態を宣言する可能性も報じられている。
こうしたなか、New World Designは、マー・ア・ラゴの周りやメキシコとの国境に「壁」を建てるキャンペーンをアメリカのクラウドファンディングサイト「GoFundMe」で立ち上げた。しかし、目標金額は5億7000万ドル(約625億円)という非現実的な数字となっており、そもそもマー・ア・ラゴの周りに柵を立ち上げるのも現実的ではない。それゆえ、本プロジェクトが実現されなかった場合には、すべての出資金は国際難民支援プログラムに寄付されるという。
なお、同社は2017年にトランプ・インターナショナル・ホテル・アンド・タワーの「TRUMP」マークを隠すバルーンアートプロジェクト「Flying Pigs on Parade: A Chicago River Folly」を発表し、ライセンスアーキテクト協会の金メダル賞を受賞した経歴がある。
ロバーツはこう語っている。「我々の提案は皮肉かもしれませんが、現在の政府の活動について声明を伝えるという目標は非常に現実的です」。