現在ベルリンを拠点として国際的に活躍する塩田千春。その大規模個展「塩田千春 つながる私(アイ)」が、大阪中之島美術館で開催される。会期は9月14日〜12月1日。
塩田は1972年大阪生まれ。2019年に森美術館で開催された個展「塩田千春展:魂がふるえる」では約66万人(同館歴代2位)の入場者数を記録し、21年には十和田市現代美術館で常設作品《水の記憶》を発表。また22年には国際芸術祭「あいち2022」に参加し、別府では個展「巡る記憶」を、岸和田市立自泉会館では「塩田千春展 Home to Home 家から家」を開催した。
「生と死」という人間の根源的な問題に向き合い、作品を通じて「生きることとは何か」「存在とは何か」を問い続けてきた塩田。出身地・大阪での大規模個展は今回がじつに16年ぶりとなり、巡回がないのが特徴だ。
本展では、全世界的な感染症の蔓延を経験した私たちが、否応なしに意識した他者との「つながり」に、3つの【アイ】-「私/I」、「目/EYE」、「愛/ai」を通じてアプローチしようというもの。新作や国内未発表作品を含む、大規模なインスタレーション作品がその中心となる。約1700平米、天井高6メートルの会場を舞台に、6点のインスタレーション作品が発表される予定だ。
例えば《家から家》は、目でとらえることができない、いまここに不在であるように思えるものとの心を介したつながりが、赤い糸と家のフォルムによって表現されたもの。《多様な現実》は、塩田作品にたびたび登場するモチーフであるドレスを用いたもので、「第二の皮膚」としてのドレスを存在させることで、身体の不在が示されている。
また、「つながり」をテーマとして広く一般からテキストメッセージを募集し(7月31日まで)、これらのメッセージを含むインスタレーション《The Eye of the Storm》も披露される予定だ。
生まれ育った大阪での個展では、パンデミックを経て気づかされた「つながり」をテーマにしたいと思いました。この展覧会は、赤いドレスの作品から始まります。不在の身体の影のように天井から吊られるドレスは、赤い糸で結ばれています。展示室に入って最初に目に入る白い糸と落ちる水滴は、生命と記憶の循環をあらわしています。さらに、帰る場所としての“Home”をあらわした家型の作品や、身体の内なる宇宙と外の宇宙を求めてドレスが回転する作品、そして最後にはつながりをテーマに集めた手紙が赤い糸の中を舞う作品が続きます。その他にも私の学生時代の油絵から最新の作品まで、30年以上の期間アーティストとして発表してきた作品を展示しています。これらの作品のほとんどは私が主にモチーフとして使う糸が施されています。絡まり、ほどけ、切れ、結ばれる…糸はまるで人間関係のつながりをあらわすかのようです。私の30年分の作品をつなぎあわせて作ったこの展覧会を沢山の人に見てもらいたいです。──塩田千春(プレスリリースより)