2024.2.2

今週末に行きたい展覧会ベスト7。織田有楽斎、円空から村上隆まで

今週開幕・閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「円空─旅して、彫って、祈って─」展の展示風景より、冒頭を飾る《金剛力士(仁王)立像(吽形)》(1685頃)
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正伝永源院の寺宝の数々が集結。「四百年遠忌記念特別展 大名茶人 織田有楽斎」(サントリー美術館)

 東京・六本木のサントリー美術館で「四百年遠忌記念特別展 大名茶人 織田有楽斎」が始まっている。レポート記事はこちら

展示風景より、《有楽斎手造茶碗》(桃山〜江戸時代 16〜17世紀)

 本展は戦国の時代、三天下人に支えて生き抜いた茶人・織田有楽斎(おだ・うらくさい)の人物像に迫るもの。有楽斎こと織田長益は天文16年(1547)に織田信秀の子、織田信長の13歳下の弟として生まれた。武将として活躍したのち、晩年には京都・建仁寺の塔頭「正伝院」を再興し隠棲。戦乱の世を信長、秀吉、家康の三天下人に仕えて乗り切ったことでも知られている。

 本展では、その人物像を総合的にとらえなおそうとしており、正伝永源院の寺宝の数々が並んでいる。全5章では、茶道具や書状の数々のほか、愛知県犬山市の有楽苑に移築されている茶室「如庵」および重要文化財の「書院」の3次元計測データを裸眼で立体視できる空間再現ディスプレイも展示されている。

会期:2024年1月31日~3月24日
会場:サントリー美術館
住所:東京都港区赤坂9-7-4(東京ミッドタウン ガレリア3F)
電話番号:03-3479-8600 
開館時間:10:00~18:00(金土・2月11日・22日・3月19日〜20:00)  ※入館は閉館の30分前まで
休館日:火(3月19日は開館)
料金:一般 1600円 / 大学・高校生 1000円 / 中学生以下無料

写真家としての才能に迫る。「ヴィム・ヴェンダースの透明なまなざし」(N&A Art SITE)

 第76回カンヌ国際映画祭に出品し、主演を務めた役所広司が最優秀男優賞を受賞した最新作『PERFECT DAYS』でも国内外から注目を集めるヴィム・ヴェンダース。その個展「ヴィム・ヴェンダースの透明なまなざし 」が、東京・目黒のN&A Art SITEで開催されている。

ヴィム・ヴェンダース 少年 1991 紙、HDプリント 36.4×51.5cm ©️Wim Wenders/Kazutomo

 『ことの次第』(1982)『パリ、テキサス』(1984)『ベルリン・天使の詩』(1987)『ミリオンダラー・ホテル』(2000)など、様々な受賞作品を生み出してきたヴェンダースだが、写真家としても活動し、これまでポンピドゥー・センターやビルバオ・グッゲンハイム美術館、上海美術館など展覧会を開催している。

 本展では、ヴェンダースが「究極のロードムービー」と称する『夢の涯てまでも』(1991)のクライマックスシーンから生み出された、鮮烈な色彩の電子絵画作品「Electronic Paintings」や、『パリ、テキサス』ロケ時にヴェンダースが撮影したアメリカ中西部の風景写真「Written in the west」シリーズが展示。アーティストとしてのヴェンダースの才能を会場で堪能してほしい。

会期:2024年2月1日〜3月2日
会場:N&A Art SITE
住所:東京都目黒区上目黒1-11-6
開館時間:12:00〜17:00 
休館日:日月祝 
料金:無料

円空の生涯と活動を追う。「円空─旅して、彫って、祈って─」(あべのハルカス美術館)

 生涯に12万体の仏像を彫ると誓ったといわれる江戸時代の僧、円空(えんくう、1632〜1695)。その足跡をたどる展覧会「円空─旅して、彫って、祈って─」が、大阪・阿倍野のあべのハルカス美術館で開幕した。レポート記事はこちら

展示風景より、手前から《両面宿儺坐像》《観音三十三応現身立像》(ともに1685頃)

 円空は修験道を修めた僧で、山岳修行によって超自然的な力を獲得を目指し、その力を用いて人々を救う実践として、各地の霊場を旅し、神仏を彫り、祈りを捧げた。円空が彫った神仏は、あるものは優しい微笑みをたたえ、あるものは迫力のある怒りの相を表すなど、現代においても多くの人を惹きつけている。

 本展では、「円空仏」とよばれ親しまれている彫刻はもちろん、絵画や文書など円空の人柄に触れることのできる貴重な資料も紹介。円空の生涯と活動を知る貴重な機会になっている。

会期:2024年2月2日~4月7日
会場:あべのハルカス美術館
住所:大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階
電話番号:06-4399-9050 
開館時間:10:00〜20:00(月土日祝〜18:00) ※入館は閉館の30分前まで 
休館日:2月5日、3月4日 
料金:一般 1800円 / 高校・大学生 1400円 / 小・中学生 500円

鑑賞者とともに考える。「恵比寿映像祭2024 『月へ行く30の方法』」(東京都写真美術館ほか)

 「映像とは何か」を問い続け、毎年東京・恵比寿の東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイスセンター広場などを中心に開催されている国際フェスティバル「恵比寿映像祭」。今年は「月へ行く30の方法」をテーマに開催されている。

恵比寿映像祭2024 メインビジュアル

 今年は「月へ行く方法」という命題を、写真や映像を主とした様々な表現によってひも解き、アーティストだけでなく、そこに参加する観客とともに考えていく試みを実施。歴史的作品から現代作品まで、異なる角度からイメージの可能性を探るものとなっている。

 展示される作品群と観客との対話を生み出す新たな空間構成の在り方を試みるとともに、東京都写真美術館のコレクション作品と現代作家による作品を結びつけることで、作品の背後にある歴史や思想を遡り、現代を考察するきっかけを創出することを目指している。

会期:2024年2月2日〜18日 ※コミッション・プロジェクト(3階展示室)のみ3月24日まで
会場:東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイス センター広場 ほか
電話番号:03-3280-0099 
開館時間:10:00〜20:00(18日〜18:00)※2月20日~3月24日のコミッション・プロジェクトは10:00〜18:00(木金〜20:00)
休館日:月(ただし12日は開館、翌日13日は休館)
料金:入場無料 ※一部プログラムのみ有料

約160点が初公開の新作。「村上隆 もののけ 京都」(京都市京セラ美術館 東山キューブ)

 名実ともに日本を代表する現代美術家である村上隆。その個展「村上隆 もののけ 京都」が、2月3日から京都市京セラ美術館 東山キューブで開催される。

村上隆

 村上は、日本美術の平面性とアニメーションなどの現代文化を接続させた「スーパーフラット」セオリーの提唱者であり、日本を代表する現代美術家として国際的なアートシーンで高い評価を得てきた。本展は、「村上隆の五百羅漢図」(森美術館)以来、その国内では8年ぶり、京都では初となる大規模個展となる。

 会場は約170点(うち約10点が立体)の作品で構成。そのうち160点ほどが初公開の新作だ。例えば岩佐又兵衛の傑作である「洛中洛外図屏風(舟木本)」(東博蔵)を引用した、全長12メートルにおよぶ村上版の「洛中洛外図」を発表。村上が「もっとも難儀している」と話す同作には2700人もの人物が描かれているという。

会期:2024年2月3日〜9月1日
会場:京都市京セラ美術館 東山キューブ
住所:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124
電話番号:075-771-4334
開館時間:10:00〜18:00 ※最終入場は17:30まで
休館日:月(ただし祝日の場合は開館) 
料金:一般 2200円 / 大学・専門学校生 1500円 / 高校生 1000円 / 中学生以下無料

心を癒やす日本美術の鑑賞。特別展「癒やしの日本美術 ―ほのぼの若冲・なごみの土牛―」(山種美術館)

 日本美術に潜む様々な「癒し」の要素。それを寄せ集めた特別展「癒やしの日本美術 ―ほのぼの若冲・なごみの土牛―」が、2月4日まで山種美術館で開催されている。レポート記事はこちら

展示風景より、長沢芦雪《菊花子犬図》(18世紀・江戸時代、個人蔵)

 日常が大きく揺らぎ、不安定な世界情勢が続くいま「マインドフルネス」、「ウェルビーイング」、「チル」といった心の動きを意識する言葉が時代のキーワードとなっている。その背景として「自分自身の内面と向き合い、心を癒やすことが求められている」ということがあるかもしれない。本展は、日本美術の鑑賞を通して心が癒やされるような体験を提供するものとなっている。

 素朴でゆるやかな表情が魅力的な若冲《布袋図》や《伏見人形図》、可愛い子犬たちがじゃれ合う芦雪《菊花子犬図》など、ユーモアあふれる作品を展示。そのほか奥村土牛の《兎》や小出楢重の《子供立像》など、愛らしい動物や子どもを描いた作品などを展覧する。さらに、奥村土牛《浄心》のように、作品の制作自体が画家自身の心を癒やすことになった例も必見の作品だ。

会期:2023年12月2日〜2024年2月4日
会場:山種美術館
住所:東京都渋谷区広尾3-12-36
開館時間:10:00~17:00 ※入場は閉館の30分前まで
料金:一般 1400円 / 大学・高校生 500円 / 中学生以下無料 

前衛的な絵画実践に迫る。シモン・アンタイ「Folding」(エスパス ルイ・ヴィトン大阪)

 キャンバスをくしゃくしゃに丸めて結び目をつくり、その上に一様に絵具を塗り、さらに広げて、顔料と下地が交互に変化するマトリックスを出現させるプリアージュで高い評価を受けたアーティスト、シモン・アンタイ。その回顧展「Folding」が、2月4日までエスパス ルイ・ヴィトン大阪で見ることができる。レポート記事はこちら

展示風景より、左からシモン・アンタイ《TABULA》(1980)、《SANS TITRE #503, PARIS)(1984) 
Courtesy Fondation Louis Vuitton, Paris
Photo credits : © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton

 ハンガリー・ビアトルバギーに生まれたアンタイは、1949年にパリに移住し、シュルレアリスムの潮流に身を投じた。60年代に生み出した独自の技法である「プリアージュ(折り畳み)」で知られている。

 2022年の生誕100年の節目では、パリのフォンダシオン ルイ・ヴィトンでアンタイの大規模回顧展「Simon Hantai. The Centenary Exhibition」が開催され、1957年から2000年までの大判作品を中心にしたアンタイの作品130点以上が展示。大阪での回顧展では、アンタイがフランスで活躍した1960年代初頭から1980年代にかけて制作した9作品が並んでおり、世界初公開の作品も含まれている。

会期:2023年9月28日〜2024年2月4日
会場:エスパス ルイ・ヴィトン大阪
住所:大阪市中央区心斎橋筋2-8-16 ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋 5F
電話番号:0120-00-1854 
開館時間:12:00〜20:00
料金:無料