「Study:大阪関西国際芸術祭 vol.3」から、石川真生の大規模個展、「倉俣史朗展」まで。今週末に見たい展覧会ベスト11

今週開幕・閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「Study:大阪関西国際芸術祭 vol.3」展示風景より、石谷岳寛 + Chim↑Pom from Smappa!Groupによる展覧会「Artchive of Street」

版画とグラフィックデザインの断層(ズレ)とは? 企画展「印刷/版画/グラフィックデザインの断層 1957-1979」(国立工芸館)

展示風景より、井田照一《The Spy Surrounds the Spy》(1974)

 石川県金沢市の国立工芸館で、印刷領域における版画とグラフィックデザインの関係性に焦点を当てる企画展「印刷/版画/グラフィックデザインの断層 1957-1979」がスタートした。

 マス・コミュニケーションが発達した戦後日本において著しい発展を遂げた印刷技術は、大衆文化と結びつき「複製メディアにおける新たな可能性」という観点から注目を集めていた。それらの様々な実験の舞台のひとつとなっていたのが、国立近代美術館などが主催を務め開催されていた「東京国際版画ビエンナーレ展」であった。

 本展は、その国際的なビエンナーレと出品作家らに着目することで、当時の最先端を追いかけた多様な視覚表現を紹介。第1回目から11回目までの受賞作を一堂に見ることができる貴重な機会であるとともに、近しい存在ながらもその考え方に差異がある「版画」と「グラフィックデザイン」のズレにフォーカスするものとなっている。レポートはこちら

会期:2023年12月19日〜2024年3月3日
会場:国立工芸館
住所:石川県金沢市出羽町3-2
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル 9:00~20:00) 
開館時間:9:30〜17:30 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし1月8日、2月12日は開館)、年末年始(12月28日〜1月1日)、1月9日、2月13日
料金:一般 300円 / 大学生 150円 / 高校生以下および18歳未満、65歳以上は無料

360度の巨大映像空間でダリ芸術の本質に迫る。「サルバドール・ダリ ― エンドレス・エニグマ 永遠の謎 ―」(角川武蔵野ミュージアム)

第1会場「体感型デジタルアート劇場」の展示風景より
Creative Direction: Gianfranco Iannuzzi

 これまで360度体験型展覧会「浮世絵劇場 from Paris」と「ファン・ゴッホ―僕には世界がこう見えるー」を開催してきた角川武蔵野ミュージアム。同館で、その第3弾企画「サルバドール・ダリ ― エンドレス・エニグマ 永遠の謎 ―」展が12月20日より開催されている。

 幻想的で非現実的な独自の内面世界を写実的技法によって克明に描き出した作品で知られているサルバドール・ダリ。本展では、《記憶の固執》(1931)、《聖アントワーヌの誘惑》(1946)、《レダ・アトミカ》(1949)などダリの数々の名作をはじめ、写真、インスタレーション、映画、記録写真などから構成される映像が、全編にわたりピンク・フロイドの楽曲とともに床や壁面360度に映し出される。レポートはこちら

会期:2023年12月20日〜2024年5月31日
会場:角川武蔵野ミュージアム 1階 グランドギャラリー
住所:埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3 ところざわサクラタウン内
開館時間:10:00〜18:00(金土〜21:00) ※最終入館は閉館の30分前
休館日:第1・3・5火
料金:一般(大学生以上) 2500円 / 中高生 2000円 / 小学生 1300円 / 未就学児無料

会田誠、アラン・バーソル、⻄尾美也のほか、Chim↑Pom from Smappa!Groupの関連展も。「Study:大阪関西国際芸術祭  vol.3」(大阪市内各所)

「Study:大阪関西国際芸術祭 vol.3」展示風景より、石谷岳寛 + Chim↑Pom from Smappa!Groupによる展覧会「Artchive of Street」

 2025年、日本国際博覧会(大阪・関西万博)と同時開催を計画している「大阪関西国際芸術祭」。その実現可能性を「スタディ」するための芸術祭として2022年より開催されてきた「Study:大阪関西国際芸術祭」が「Study:大阪関西国際芸術祭 Vol.3」として開催される。会期は12月23日〜28日。

 第3回目となる今回は、ルクア イーレ、船場エクセルビル、中之島エリア、西成エリア、など大阪市内各所で展覧会を開催。さらに、アートの販売プログラムとして「アート&クリエイティブフェア」(グランフロント大阪 コングレコンベンションセンター)や、スタートアップを対象としたビジネスコンテスト「StARTs UPs」も同時開催される。

展覧会
会期:2023年12月23日~12月28日
会場:ルクア イーレ、船場エクセルビル、中之島エリア、西成エリア、など大阪市内各所

アート & クリエイティブフェア
日時:12月23日 11:00〜19:00、12月24日 11:00〜16:00
会場:グランフロント⼤阪北館 B2階 コングレコンベンションセンター

クリエイティブビジネスコンテスト「StARTs UPs(スターツアップス)」
日時:12月23日午後予定
会場:グランフロント⼤阪北館 B2階 コングレコンベンションセンター

模造品を通じて、受け継ぐことの大切さに目を向ける。「正倉院宝物を受け継ぐ ―明治天皇に始まる宝物模造の歴史―」(明治神宮ミュージアム)

展示風景より、模造《螺鈿箱》

 東京・代々木にある明治神宮ミュージアムで、「正倉院宝物を受け継ぐ ―明治天皇に始まる宝物模造の歴史―」が開催される。会期は12月23日〜2024年2月25日。

 光明皇后が聖武天皇の御遺愛品を奈良・東大寺の盧舎那仏に捧げたことに始まる「正倉院宝物」。その奇跡的な保存状態の良好さが認められるものの、約1300年以上が経過する数々の宝物は脆弱となっており、1877年に明治天皇が展覧された際には、毀損しているものも見受けられた。『明治天皇紀』には、それらの整理と修理を命じたことが記されており、現代まで続く正倉院宝物の修理や模造製作の第一歩であるとされている。

 本展で出品されるのはすべて再現された模造品だ。これらを通じて、宝物を守り伝える大切さ、再現するための技術や最新の研究成果が紹介されるという。

会期:2023年12月23日〜2024年2月25日
会場:明治神宮ミュージアム
住所:東京都渋谷区代々木神園町1-1
開館時間:10:00〜16:30 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:木(ただし、1月4日は開館)
料金:一般 1500円 / 高大生 1000円 / 中学生以下無料

日米を行き来した建築家・吉村順三の業績を明らかにする。「建築家・吉村順三の眼 ーアメリカと日本ー」(GALLERY A4

 GALLERY A4(ギャラリー エー クワッド)で、日本とアメリカを行き来し、日本の建築文化をアメリカに伝えた建築家・吉村順三に焦点を当てた展覧会「建築家・吉村順三の眼 ーアメリカと日本ー」が12月22日にスタートした。

 1940年からアメリカに滞在していた吉村は、コロニアル建築の素朴な空間やニューヨークの摩天楼に至るまでを間近に経験。吉村にとって、日本建築の伝統のなかに潜む、近代建築の要素を再発見するきっかけとなっていた。戦後、アメリカで経験したモダンライフを日本の建築に取り込むと同時に、日本の感性や思想を、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の中庭に建設した「松風荘」をはじめ、モテル・オン・ザ・マウンテンなどの作品を通じてアメリカに紹介し話題となった。

 本展では、吉村がアメリカで担当した作品から、国際的に活躍する芸術家らとの交流から生まれた日本の作品までを、スケッチや写真、映像を交えて紹介し、その業績を明らかにするものとなっている。

会期:2023年12月22日〜2024年3月28日
会場:GALLERY A4(ギャラリー エー クワッド)
住所:東京都江東区新砂1-1-1 
開館時間:10:00〜18:00(土、最終日〜17:00) 
休館日:日祝、年末年始(12月28日~1月4日)
料金:無料

倉俣史朗のゆかりの地で。「倉俣史朗展」(ときの忘れもの)

 2017年に青山から駒込に移転した「ときの忘れもの」で、倉俣史朗展が12月23日まで開催中だ。

 倉俣は駒込の地で生まれ、近くの昭和小学校に通っていた。本展は、来年生誕90年を迎える倉俣史朗のゆかりの地での「倉俣史朗展」となる。

 会場では、現在エディション進行中のシルクスクリーン作品集『倉俣史朗 Shiro Kuramata Cahier』1集2集3集、1979年東京国際版画ビエンナーレ出品の貴重なオリジナル版画《無極Ⅱ》、1983年筑波第一ホテルの客室用鏡、1989年パリの個展のために制作した"Cabinet de Curiosite"はじめ、椅子《How High the Moon》、香水瓶やフラワーベースなどの小物、オブジェ《薔薇の封印》などを展示。

会期:2023年12月8日〜23日
会場:ときの忘れもの
住所:東京都文京区本駒込5-4-1
電話番号:03-6902-9530 
開館時間:11:00〜19:00 
休館日:日月祝 
料金:無料

「私」は沖縄に何を見るのか。「石川真生 ー私に何ができるかー」(東京オペラシティ アートギャラリー)

展示風景より、「大琉球写真絵巻」パート8(2020-2021)

 沖縄のアイデンティティや現状を強く訴えながら制作活動を続ける写真家・石川真生(いしかわ・まお)。その大規模個展「石川真生 ー私に何ができるかー」が、東京・初台の東京オペラシティ アートギャラリーで12月24日まで開催中だ。

 石川は1953年沖縄県大宜味村生まれ。70年代から写真を始め、74年にWORKSHOP写真学校東松照明教室で写真を学んだ。以降、現在に至るまで沖縄で生きる人々と、その困難な状況を最前線で見つめ続けてきた。本展は初期作品から最新作まで、石川の作歴をたどることができる大規模個展となっている。レポートはこちら

会期:2023年10月13日〜12月24日
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:11:00〜19:00 ※入場は18:30まで
休館日:月
料金:一般 1400円 / 大学・高校生 800円 / 中学生以下無料

帝国ホテル二代目本館の100周年を記念。「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」(豊田市美術館)

帝国ホテル二代目本館 第2案 横断面図 ©The Frank Lloyd Wright Foundation Archives (The Museum of Modern Art | Avery Architectural & Fine Arts Library, Columbia University, New York)

 アメリカ近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライト(1867〜1959)が手がけた「帝国ホテル二代目本館」の落成100周年を記念した展覧会「帝国ホテル二代目本館100周年 フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」が愛知県豊田市の豊田市美術館で12月24日まで開催されている。

 2012年にはフランク・ロイド・ライト財団から図面をはじめとする約5万点の資料がニューヨーク近代美術館とコロンビア大学エイヴリー建築美術図書館に移管。建築のみならず、芸術、デザイン、著述、造園、教育、技術革新、都市計画といった、ライトの広範な視野と知性を明るみにする調査研究が現在も続けられている。本展ではそのような近年の研究成果を踏まえ、多様な文化と交流し先駆的な活動を展開したライトの姿を、帝国ホテルを基軸に明らかにするものとなる。

会期:2023年10月21日~12月24日
会場:豊田市美術館 展示室8
住所:愛知県豊田市小坂本町8-5-1
開館時間:10:00〜17:30 ※入場は17:00まで 
休館日:月
料金:一般 1400円 / 高校・大学生 1000円 / 中学生以下無料

いままで知られてこなかった宮島達男のもうひとつの顔。宮島達男「Life Face on Gold」(AKIO NAGASAWA GALLERY GINZA)

 東京・銀座のAKIO NAGASAWA GALLERY GINZAで開催されている宮島達男による個展「Life Face on Gold」が12月23日で閉幕する。

 宮島は「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」の3つのコンセプトに基づいて作品制作を⾏っている。「Life Face on Gold」と題された本展は、⾦箔にエンボスが施されたペインティング作品を中⼼に、パフォーマンスの痕跡としてのドローイング作品などを展示している。

会期:2023年9月29日〜12月23日
会場:AKIO NAGASAWA GALLERY GINZA
住所:東京都中央区銀座4-9-5 銀昭ビル6F
開館時間:11:00〜19:00(⼟曜は13:00〜14:00⼀時休廊)
休館日:日月祝 
料金:無料

吉田ユニの世界観で撮影された、54枚のトランプカード。吉⽥ユニ「PLAYING CARDS」(ラフォーレミュージアム 原宿)

展示風景より

 国内外で活躍するアートディレクター吉田ユニ。現在、東京・原宿のラフォーレミュージアムで開催中の新作展が12月25日に閉幕する。

 同ミュージアムでの3回⽬の個展となる本展は、今夏、韓国・ソウルミュージアムで開催され10万⼈以上を動員し、好評を博した展覧会(Alchemy)にて発表された新作「PLAYING CARDS」を国内で初公開するもの。54枚すべてのトランプカードを写真で表現した作品の展示をメインに、創作過程を記録したメイキング動画、吉⽥ユニの世界観を撮影できるフォトスポットも用意されている。

会期:2023年12月3日〜25日
会場:ラフォーレミュージアム 原宿
住所:東京都渋谷区神宮前1-11-6 ラフォーレ原宿6階
電話番号:03-3475-0411
開館時間:11:00〜20:00 ※入場は閉館の30分前まで 
休館日:会期中無休
料金:⼀般 1000円 / 学⽣ 500円 / ⾼校⽣以下無料

何気なく目にするものに向き合う時間を生み出す。Nerhol「REVERBERATION」(The Mass)

 東京・神宮前のギャラリーThe Massで、Nerhol(ネルホル)による新作展「REVERBERATION」が12月26日まで開催されている。

 今回Nerholが発表する作品群のテーマとなっている帰化植物とは、本来の自生地から人間活動を含む様々な要因によってほかの地域へ運ばれ、やがてその土地で野生化した植物のことを指す。そこにはその植物やそれを運んだ何か、またはその因果をつくった人間の活動の歴史が存在しており、まさにそこに介在する時間や歴史という概念こそNerhol作品に通底する欠かせないコンセプトと言える。

 本展で展示されるのはNerholが近年制作を続けてきたシリーズのひとつであり、普段何気なく目にするものを再び意識させ、そこに向き合う時間を与えてくれるものとなっている。 

会期:2023年11月18日〜12月26日
会場:The Mass
住所:渋谷区神宮前5-11-1
電話番号:03-3406-0188
開館時間:12:00〜19:00
休館日:月火(12月25日、26日は特別開廊) 
料金:無料

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