2023.10.13

やまと絵から奈良美智、崔在銀展まで。今週末に見たい展覧会ベスト10

今週開幕・閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「やまと絵―受け継がれる王朝の美―」の展示風景より、国宝《聖徳太子絵伝 第一面・二面》(平安時代・1069)東京国立博物館
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「やまと絵」の歴史を追う。「やまと絵―受け継がれる王朝の美―」(東京国立博物館)

展示風景より、伝土佐光信筆《松図屛風》(室町時代・16世紀)東京国立博物館

 10月11日、東京国立博物館で「やまと絵―受け継がれる王朝の美―」展が始まった。「やまと絵」の歴史を追う、日本美術の教科書ともいえる作品が並ぶ特別展となっている。レポート記事はこちら

 「やまと絵」を扱った東博の特別展としては、1993年の「やまと絵―雅(みやび)の系譜」以来、30年ぶりとなる本展。国宝51件、重要文化財125件の出展が決まっており、四大絵巻(《源氏物語絵巻》《信貴山縁起絵巻》《伴大納言絵巻》《鳥獣戯画》、すべて国宝)、神護寺三像(《伝源頼朝像》《伝平重盛像》《伝藤原光能像》、すべて国宝)、三大装飾経(《久能寺経》《平家納経》《慈光寺経》、すべて国宝)という名品を、入れ替えながらも同じ会場で展示されている。

会期:2023年10月11日〜12月3日
会場:東京国立博物館 平成館
住所:東京都台東区上野公園13-9
電話番号:050-5541-8600
開館時間:9:30〜17:00(金土〜20:00) ※入館は閉館の60分前まで 
休館日:月(ただし本展のみ11月27日は開館)
料金:一般 2100円 / 大学生 1300円 / 高校生 900円 / 中学生以下 無料

日本美術の世界の地殻変動を振り返る。「激動の時代 幕末明治の絵師たち」(サントリー美術館)

展示風景より、狩野一信《五百羅漢図》(1854〜63)

 江戸から明治へと移り変わる激動の19世紀において、日本絵画の伝統を受け継ぎながら新たな表現へ挑戦した絵師たち。そんな幕末から明治期にかけて個性的な作品を描いた絵師や変革を遂げた画派の作品に着目する展覧会「激動の時代 幕末明治の絵師たち」が、東京・六本木のサントリー美術館でスタートした。レポート記事はこちら

 近年の美術史では江戸から明治へのつながりを重視するようになり、幕末から明治期にかけては様々な絵師たちが腕を奮った時代として注目度が高まっている。大きく歴史が転換したこの時代に江戸・東京を中心に活動した異色の絵師たちを紹介することで、日本美術の世界で起きたひとつの地殻変動を振り返る。

会期:2023年10月11日~12月3日 ※会期中展示替えあり
会場:サントリー美術館
住所:東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階
電話番号:03-3479-8600
開館時間:10:00〜18:00(金土・11月2日・22日〜20:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:火(11月28日は開館)
料金:一般 1500円 / 大学・高校生 1000円 / 中学生以下無料

門外不出の文化財を高精細で楽しむ。「スミソニアン国立アジア美術館の名宝 ~高精細複製品による里帰り~」(大本山建仁寺)

俵屋宗達筆 扇面散図屏風 Freer Gallery of Art, Smithsonian Institution, Washington, D.C.: Gift of Charles Lang Freer, F1900.24

 京都・大本山建仁寺で、スミソニアン国立アジア美術館が所蔵する門外不出の日本美術の複製を展示する特別展「スミソニアン国立アジア美術館の名宝 ~高精細複製品による里帰り~」が開幕した。

 本展では、池田孤邨筆《紅葉に流水・山景図屏風》、俵屋宗達筆《扇面散図屏風》、狩野元信筆《四季花木草花下絵山水図押絵貼屏風》の高精細複製品が初公開。加えて、京都文化協会とキヤノンが2007年から共同で取り組む社会貢献活動「綴プロジェクト」で制作したスミソニアン国立アジア美術館所蔵作品の高精細複製品15作品も紹介されている。

会期:2023年10月13日〜11月3日
会場:大本山建仁寺 本坊
住所:京都市東山区大和大路通四条下る小松町584
開場時間:10:00~17:00 ※受付は閉場の30分前まで
休館日:会期中無休 
料金:無料 ※建仁寺の拝観料(600 円)が別途必要

写真家・石川真生の実像に迫る。「石川真生 ー私に何ができるかー」(東京オペラシティ アートギャラリー)

展示風景より、「大琉球写真絵巻」パート8(2020-2021)

 沖縄を拠点としながら精力的な制作活動を続ける写真家・石川真生(いしかわ・まお)の初期から主要を集めた大規模個展「石川真生 ー私に何ができるかー」が、東京・初台の東京オペラシティ アートギャラリーで開催されている。

 石川にとって東京での初個展となる本展では、初期の作品から2014 年から取り組んでいる「大琉球写真絵巻」の新作を中心に約170点を展示し、石川真生の実像に迫る。石川の作歴を概観するとともに、昨年沖縄の本土返還50周年を迎えるもなお、困難な状況に置かれている現代の沖縄という地政学的な最前線で撮影を続けている石川の活動を目撃する機会ともなるだろう。

会期:2023年10月13日〜12月24日
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル) 
開館時間:11:00〜19:00 ※入場は18:30まで 
休館日:月 
料金:一般 1400円 / 大学・高校生 800円 / 中学生以下無料

奈良美智の「はじまりの場所」を探る。「奈良美智: The Beginning Place ここから」(青森県立美術館)

 昨年、青森の弘前れんが倉庫美術館で開催された「もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?」に続き、奈良の個展がふたたび青森の美術館で開催される。10月14日、「奈良美智: The Beginning Place ここから」展が青森県立美術館で始まる。

 本展は、同館では約10年ぶりの奈良個展。東日本大震災以後、奈良は自らがよって立つ地盤を確かめるように、たびたび過去に意識を向けている。自分史に関わる土地に旅をしたり、旧作を新たな眼差しでとらえ直したりなど、過去との出会いを通じて「自分の時間軸に一本の幹を見つけ」ようとしているという。本展では、感性の起源(はじまりの場所)へと至る「一本の幹」を探り当てるべく設けられた5つのテーマに沿って、近年の作品とともに学生時代にまでさかのぼる秀作の数々が紹介される。 

会期:2023年10月14日〜2024年2月25日
会場:青森県立美術館
住所:青森市大字安田字近野185
電話番号:017-783-3000
開館時間:9:30〜17:00(10月21日、11月18日、12月9日、2024年1月20日、2月17日〜20:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:10月23日、11月13日、27日、12月11日、25日〜2024年1月1日、9日、22日、2月13日
料金:一般 1500円 / 高大生 1000円 / 小中学生 無料

環境危機の様相に迫る。崔在銀「新たな生」(銀座メゾンエルメス フォーラム)

 エルメス財団によって開催される、アートにおけるエコロジーの実践を問う「エコロジー:循環をめぐるダイアローグ」展。その一環として、環境や自然との対話を継続してきたひとりの作家・崔在銀の個展「新たな生」が、東京の銀座メゾンエルメス フォーラムで10月14日から開催される。

 本展は、生存に関わる自然生態系の事実を直視しながら、自然との理想的な共存関係を再構築するプロセスとして、崔の過去作と新作を織り交ぜながら紹介するもの。世界7ヶ国に和紙を埋めたのち時を経て掘り起こした「World Underground Project」や、韓半島を南北に隔てる非武装地帯(DMZ)で森の復元を試みる「Dreaming of Earth Project(大地の夢プロジェクト)」などの現行のプロジェクトのほか、白いサンゴを用いた新作《White Death》を通じて、切迫した環境危機の様相に静かに迫る。

会期:2023年10月14日〜2024年1月28日
会場:銀座メゾンエルメス フォーラム 8・9階
住所:中央区銀座5-4-1
電話番号:03-3569-3300
開館時間:11:00–19:00 ※入場は18:30まで
休館日:不定休 ※銀座店の営業に準じる
料金:無料

アーツ前橋の未来に向けて。「ニューホライズン 歴史から未来へ」(アーツ前橋)

レフィーク・アナドール Living Paintings Immersive Editions: Artificial Realities: Winds of LA / Pacific Ocean / California Landscapes 撮影=Joshua White Courtesy of Jeffrey Deitch, New York and Los Angeles

 今年5月、新たに特別館長に南條史生、館長に出原均、チーフキュレーターに宮本武典を迎えた群馬・前橋のアーツ前橋。そこで、その開館10周年を記念する展覧会「ニューホライズン 歴史から未来へ」が開催される。

 本展では8ヶ国より11人の海外作家が参加。オラファー・エリアソン、ジェームズ・タレル、ビル・ヴィオラ、蔡國強、レフィーク・アナドールなどが名を連ねる。また日本人作家としては、井田幸昌、岡田菜美、川内理香子、木原共、五木田智央、スプツニ子!、関口光太郎、武田鉄平、蜷川実花、袴田京太朗、ハシグチリンタロウ、マームとジプシー、松山智一、村田峰紀、山口歴、WOW、横山奈美、403architecture[dajiba]が参加する。

会期:2023年10月14日〜2024年2月12日
会場:アーツ前橋と前橋市中心市街地
住所:群馬県前橋市千代田町5-1-16(アーツ前橋)
電話番号:027-230-1144
開館時間:10:00〜18:00 ※入館は17:30まで
休館日:水、年末年始(12月27日〜1月4日)
料金:一般 1500円 / 学生・65歳以上・団体(10名以上) 1000円 / 高校生以下 無料

歌舞伎町の王城ビルを舞台に。Chim↑Pom from Smappa!Group「ナラッキー」(王城ビル)

展示風景より、《奈落》(2023)

 Chim↑Pom from Smappa!Group(以下、Chim↑Pom)による新プロジェクト「ナラッキー」が、10月15日まで東京・新宿の王城ビルで開催されている。レポート記事はこちら

 1964年に竣工し、2020年3月まで続いてきた王城ビル。全館を使用する本展では、「奈落」をテーマにChim↑Pomが新作インスタレーションを制作・常設展示。ほかにも、レストランや各種イベント、ショップも手がけ、「Chim↑Pom from Smappa!Groupによる美術館」のような施設を体験できる最後の機会だ。

会期:2023年9月2日〜10月15日
会場:王城ビル
住所:東京都新宿区歌舞伎町1−13−2
開館時間:15:00~21:00(最終入館は20:30まで) ※1階レストランは22:00まで営業
料金:一般 2000円 / 学生、障がい者手帳所持者 1500円 

ヒロシマを今日の問題としてとらえる新作に注目。「アルフレド・ジャー展」(広島市現代美術館)

展示風景より、《Music (Everything I know I learned the day my son was born)》(2013-2014/2020-2023)

 世界最初の被爆地である広島市が、世界の恒久平和と人類の繁栄を願う「ヒロシマの心」を美術を通して世界へ訴えることを目的とし、3年に一度授与してきたヒロシマ賞。1989年に創設され、第11回ヒロシマ賞の受賞者となったアルフレド・ジャーの受賞記念展が、広島市現代美術館で10月15日まで行われる。レポート記事はこちら

 世界各地で起きた歴史的な事件や悲劇、社会的な不均衡に対して、綿密な調査に基づくジャーナリスティックな視点を持ちながら、五感に訴えかけるようなインスタレーションを発表してきたジャー。日本で初めての本格的な個展となる本展では、ジャーのこれまでの代表作とともに、ヒロシマを今日の問題としてとらえるような新作を展示し、その創作活動の全貌を紹介している。ジャーのインタビュー記事はこちら

会期:2023年7月22日〜10月15日
会場:広島市現代美術館
住所:広島県広島市南区比治山公園1-1
電話番号:082-264-1121
開館時間:10:00〜17:00(入場は閉館30分前まで)
料金:一般 1300円(1000円) / 大学生 950円(750円) / 高校生・65歳以上 650円(500円) / 中学生以下無料 ※()内は前売り及び30名以上の団体料金

「やすらぎと自由の追求」。企画展「楽しい隠遁生活―文人たちのマインドフルネス」(泉屋博古館東京)

展示風景より、左から富岡鉄斎《掃蕩俗塵図》(大正時代、1917)、森琴石《山水図》(明治時代、1897)、帆足杏雨《山水図》(江戸時代、19世紀)

 せわしない俗世を離れて隠遁生活を送りたいという願いは古くからあり、山水画をはじめとした絵画においても多く描かれてきた。こうした「隠遁」への憧れが込められた作品を紹介する企画展「楽しい隠遁生活―文人たちのマインドフルネス」が、10月15日まで東京・六本木の泉屋博古館東京で開催されている。レポート記事はこちら

 展覧会は4部構成。古代中国の孔子や三国時代の「竹林の七賢」、南北朝時代の陶淵明などを描いた作品から、俗世を離れて書画や酒を楽しみ、そこから優れた文芸作品が生まれる「文人」を主題に描いた作品まで、「やすらぎと自由の追求」という普遍的なテーマを見出すことができる。

会期:2023年9月2日~10月15日
会場:泉屋博古館東京
住所:港区六本木1-5-1
料金:一般 1000円 / 大学・高校生 600円 / 中学生以下無料