潤沢なコレクションを山口晃はどう見たか。「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」(アーティゾン美術館)
東京・京橋のアーティゾン美術館で「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」が開催される。同館の石橋財団コレクションと現代美術家の共演「ジャム・セッション」の第4弾となる、画家・山口晃とのコラボレーション企画だ。
西欧の近代絵画と日本の近代絵画を蔵する石橋財団コレクションを前に山口は「日本は近代を接続し損なっている、いわんや近代絵画をや。写実絵画やアカデミズム絵画に対する反動としての、あるいはその本来性を取り戻すためのものが西欧の〈近代絵画〉であろう。が、写実絵画やアカデミズム絵画の歴史を持たぬ本邦に移入された近代絵画とはなんであろう」と述べている(プレスリリースより)。
山口がジャム・セッションの対象として選んだのは、雪舟の《四季山水図》とポール・セザンヌの《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》。本展では、山口の原画に加えて、これらの作品と関連した山口によるインスタレーションや自由研究を展示。「近代」「日本的コード」「日本の本来性」とは何かを問う内容となる。
会期:2023年9月9日〜11月19日
会場:アーティゾン美術館 6階展示室
住所:東京都中央区京橋1-7-2
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00〜18:00(11月3日を除く金〜20:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(9月18日、10月9日は開館)、9月19日、10月10日
料金:一般 1200円(日時指定予約制、当日チケット[窓口販売]1500円 / 学生無料(要ウェブ予約)
巨大ロボットの系譜を考える。「日本の巨大ロボット群像-巨大ロボットアニメ、そのデザインと映像表現-」(福岡市美術館)
日本のアニメーションにおける巨大ロボットのデザインとその映像表現の歴史を辿り、「巨大ロボットとは何か」を問う展覧会「日本の巨大ロボット群像-巨大ロボットアニメ、そのデザインと映像表現-」が、福岡市美術館で開催される。会期は9月9日〜11月12日。
『鉄人28号』(1963)をロボットアニメの嚆矢として、その後『マジンガーZ』(1972)の大ヒット、そしてロボットアニメの流れに新風を吹き込んだ『機動戦士ガンダム』(1979)の影響下、今日に至るまで多数のロボットアニメが制作され、魅力的なロボットがデザインされてきた。
本展では『鉄人28号』から近年のロボットアニメにおけるロボットのデザインと映像表現の歴史を、それらの「リアリティ」形成において重要な役割を果たした設定上の「メカニズム」と「大きさ」を軸に検証。そのうえで、「巨大ロボットとは何か」を問う展覧会が目指される。
会期:2023年9月9日〜11月12日
会場:福岡市美術館
住所:福岡県福岡市中央区大濠公園1-6
開館時間:9:30~17:30
休館日:月(9月18日、10月9日は開館)、9月19日、10月10日
料金: 一般 1600円 / 大学・高校生 800円 / 中・小学生 500円
投票を通じて彫刻を考える。「小田原のどか 近代を彫刻/超克する—津奈木・水俣編[序](小田原のどかつなぎプロジェクト2023成果展)」(つなぎ美術館)
彫刻家であり彫刻研究者でもある小田原のどかによる、地域内外の人々とともに彫刻やモニュメントと社会の関わりについて考える2か年の住民参画型アートプロジェクト「小田原のどかつなぎプロジェクト」の成果展が、熊本・津奈木町のつなぎ美術館で開催される。
津奈木町では水俣病からの地域再生と魅力ある文化的空間の創造を目的に、1984年から「緑と彫刻のある町づくり」に取り組み、町内の要所には16点の彫刻を展示している。
展覧会は、選挙の投票場を模した会場で気になる彫刻に投票をしつつ、地域内外の人々と公共空間における彫刻のあり方について考える、参加型のものとなる。
会期:2023年9月9日〜11月19日
会場:つなぎ美術館
住所:熊本県葦北郡津奈木町岩城494
電話番号:0966-61-2222
開館時間:10:00〜17:00
休館日:水
料金:無料
ふたりの作家の新たなつながりを見出す。「土方久功と柚木沙弥郎 ――熱き体験と創作の愉しみ」(世田谷美術館)
土方久功(1900〜1977)は、東京美術学校(現・東京藝術大学)彫刻科を卒業後、1929年から42年まで、当時日本の委任統治領であったパラオ諸島や、カロリン諸島中部のサタワル島で過ごす。現地の人々と生活しながら制作に励むいっぽうで、周辺の島々を巡り、生活様式や儀礼、神話などの詳細な調査も熱心に行なった。帰国後は世田谷区の自宅で、ミクロネシアの人物や風景を主題とした木彫レリーフやブロンズ彫刻、水彩画を数多く制作している。さらには民族誌学的調査の成果をまとめた著書や、詩集、絵本も出版。
柚木沙弥郎(1992年生まれ)は東京帝国大学(現・東京大学)文学部美学美術史科で学んだ後、柳宗悦が提唱する「民藝」の思想と、芹沢銈介の型染カレンダーとの出会いを機に染色の道を志すようになる。以来、鮮やかな色彩と大胆な構図の型染による作品を発表するほか、立体作品、絵本まで精力的な創作活動を展開している。100歳を迎えてなお活躍を続ける柚木の作家人生においては、海外でメキシコの玩具などを目にした経験が、より自由な表現へ向かう契機と言える。
両者に直接的な接点はないものの、多彩な表現の広がりをみせる土方と柚木の作品世界は、不思議と共通項を見出すことができる。本展では世田谷美術館の収蔵品に作家や遺族の方が所蔵する作品と資料を加え、パラオ諸島や周辺の島々での稀有な体験、そして日常の身近なものや出来事に潜む面白さを源泉として生まれた二人の創造の世界を紹介する。
会期:2023年9月9日~11月5日
会場:世田谷美術館
住所:東京都世田谷区砧公園1-2
電話:03-3415-6011
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:月、9月19日、10月10日は休館(9月18日、10月9日は開館)
観覧料:一般 500円 / 65歳以上 400円 / 大高生 400円 / 中小生 300円
いかにしてサグラダ・ファミリアはつくられたのか。「ガウディとサグラダ・ファミリア展」(東京国立近代美術館)
ガウディの建築思想と造形原理を読み解く東京国立近代美術館の展覧会「ガウディとサグラダ・ファミリア展」は9月10日まで。レポート記事はこちら。ガウディの仕事を紹介する展覧会はこれまで様々なかたちで開催されてきたが、本展は、「未完の聖堂」と称されながらも、いよいよ完成の時期が視野に収まりつつあるサグラダ・ファミリア聖堂に焦点を絞ったものとなっている。
担当学芸員・鈴木勝雄(東京国立近代美術館 企画課長)は開幕前の記者会見で、「サグラダ・ファミリア聖堂をつくりながら、ガウディ自身が成長し、変化してきた過程、そしてガウディの創造の源泉を紐解きながら、それらがサグラダ・ファミリア聖堂にどのように総合されていったかという過程を本展で確認していきたい」と話している。
構成について鈴木は次のように説明。「最初の2章を通し、ガウディの独自の世界を築くにあたり、いかに東西様々なイメージソースを吸収し、そこから彼の独自の理論や造形性をつくりだしていったかという、その頭のなかを覗いてみる。そこで見えてきたガウディの独創性の水脈がいかにその一大プロジェクトであるサグラダ・ファミリア聖堂へとつながり、ガウディの没後、その意志を受け継ぎながら、様々な人々の創造性や創意工夫によって続いているかを考察する」。
会期:2023年6月13日~9月10日
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
開館時間:10:00~17:00(金土~20:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし7月17日は開館)、7月18日
料金:一般 2200円 / 大学生 1200円 / 高校生 700円 / 中学生以下無料
動物彫刻と美術館のシンクロ。「三沢厚彦 ANIMALS/Multi-dimensions」(千葉市美術館)
千葉市美術館で彫刻家・三沢厚彦の個展「三沢厚彦 ANIMALS/Multi-dimensions(アニマルズ/マルチ・ディメンションズ)」が9月10日まで開催されている。展覧会レポートはこちら。
三沢は1961年京都府生まれ。幼少期から京都や奈良の仏像に親しむうちに彫刻の魅力に惹かれ、彫刻家を志す。高校、大学と彫刻科で学び、東京藝術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻を修了した。1990年代に流木などを寄せ集めて制作された「コロイドトンプ」シリーズで注目を浴び、人間の想像力への関心から2000年より手がけている「ANIMALS」では、動物のリアリティを追求していく革新的な造形が評価されている。
本展に冠された「Multi-dimensions」という言葉について、担当学芸員の森啓輔は次のように語っている。 「『多次元』という意味を持つ『Multi-dimensions』というテーマは、大谷幸夫が設計した千葉市美術館という建物と接続している。三沢からは『多様性』『多次元性』『中庭』『シンクロニシティ(共時性)』といったキーワードが提示されたが、このなかの『多次元』をテーマに据えることにした。8階で『ANIMALS』を展示。そして7階で90年代の初期作品や『コロイドトンプ』シリーズ、千葉市美術館のコレクションとのコラボレーション、近年三沢が取り組む空想上の動物シリーズなどを展示した」。
会期:2023年6月10日〜9月10日
会場:千葉市美術館
住所:千葉市中央区中央3-10-8
電話番号:043-221-2311
開館時間:10:00〜18:00(金土〜20:00)
休館日:8月7日、21日、9月4日
料金:一般 1200円 / 大学生700円 / 小・中学生、高校生 無料
あなたの「ホーム」はどこに。「ホーム・スイート・ホーム」(国立国際美術館)
国立国際美術館の国内外で活動する現代美術作家たちによる特別展 「ホーム・スイート・ホーム」は9月10日まで。文化研究者の山本浩貴によるレビューはこちら。
本展では、歴史、記憶、アイデンティティ、私たちの居場所、役割などをキーワードに表現された作品群から、私たちにとっての 「ホーム」、家そして家族とは何か、私たちが所属する地域、社会の変容、普遍性を浮かび上がらせることを試みるものとなっている。
参加作家は、アンドロ・ウェクア、ソンファン・キム、マリア・ファーラ、リディア・ウラメン、石原海、鎌田友介、竹村京、潘逸舟。参加作家のひとり、ジョージア出身でドイツ・ベルリン在住のアンドロ・ウェクアは、ロシアの侵略により故郷を追われた体験から独特な世界観を絵画、彫刻を通じて表現している。また、鎌田友介は日本、韓国、台湾、ブラジルなどに建てられた20世紀の歴史が交錯する日本家屋を調査してきた。忘れ去られようとする現代日本の歴史を展示室内の作品を通じて再構築している。
会期:2023年6月24日~9月10日
会場:国立国際美術館 B3階展示室
住所:大阪府大阪市北区中之島4-2-55
電話番号:06-6447-4680
開館時間:10:00~17:00(金土~20:00) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月
料金:一般 1300円 / 大学生 800円 / 高校生以下、18歳未満 無料
村上隆の新収蔵作品も初公開中。「コレクション1 80/90/00/10」(国立国際美術館)
大阪・中之島の国立国際美術館が昨年度に新収蔵した村上隆の《727 FATMAN LITTLE BOY》(2017)。これを初披露するコレクション展「コレクション1 80/90/00/10」は9月10日まで。レポート記事はこちら。
日本の公立美術館は作品購入予算は少ない、というのが通説だが、国立は例外だ。国立国際美術館の2022年度購入予算は約7億4000万円で、37点が購入された。その目玉が、村上の絵画作品《727 FATMAN LITTLE BOY》(2017)だ。同館が村上の作品を収蔵するのはこれが初となる。
このほか本展では、世田谷美術館の「デ・ジェンダリズム~回帰する身体」(1997)で展示された来歴を持つ西山美なコの絵画作品「Looking at you」シリーズ(1997)や、乗り物をモチーフにした國府理の初期作品、2010年の個展「束芋 :断面の世代」を機に収蔵した束芋による映像インスタレーション《団断》(2009)、2018年開催の「ニュー・ウェイブ 現代美術の 80年代」展を経て収蔵された中原浩大の絵画インスタレーション《Pine Tree Installation; アトム》(1983)など、約8100点のコレクションから厳選された61点が並ぶ。
会期:2023年6月24日〜9月10日
会場:国立国際美術館 地下2階展示室
住所:大阪市北区中之島4-2-55
電話番号:06-6447-4680
開館時間:10:00〜17:00(金土〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(7月17日は開館)、7月18日
料金:一般 430円 ※同時開催の「ホーム・スイート・ホーム」の観覧料で観覧可能
鑑賞者の思考を体験から誘発。飯川雄大展 「デコレータークラブ:未来のための定規と縄」(鹿児島県霧島アートの森 )
鹿児島県霧島アートの森で 「鹿児島県霧島アートの森 現代美術|特別企画展 飯川雄大展 『デコレータークラブ:未来のための定規と縄』」が9月10日まで開催されている。
飯川雄大は1981年兵庫県生まれ。2007年から 「デコレータークラブ」シリーズの制作を始め、鑑賞者の行為によって起きる偶然をポジティブにとらえ、思考を誘発しながら展開する作品を制作している。
本展で飯川は、定規と縄をモチーフに新作を発表。鑑賞者の身体的行為を取り込み、展示室だけでなく野外広場へとつながる大規模なインスタレーションを展開している。また、誰かの忘れ物かのような《ベリーヘビーバッグ》(2010〜) や、全貌をとらえることのできない大きな彫刻《ピンクの猫の小林さん》(2016〜)など、飯川が継続して発表しているユーモアと洞察に満ちた作品も公開されている。
会期:2023年7月14日~9月10日
会場:鹿児島県霧島アートの森
住所:鹿児島県姶良郡湧水町木場6340-220
電話:0995-74-5945
開館時間:9:00~17:00(ただし7月20日〜8月31日の土日祝は〜19:00)※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(祝日の場合は翌平日)
観覧料:一般 1200円 / 大学・高校生 800円 / 中学・小学生 600円
震災の遺産を新たな痕跡に。青野文昭個展「彷徨う欲動ー幽霊船ー地球の裏側から帰還した人々1613-2023(慶長遣欧使節ーサン・ファン・バウティスタ号(模型)の廃材から)」
宮城・仙台市の秋保の杜 佐々木美術館&人形館で、「青野文昭個展 彷徨う欲動ー幽霊船ー地球の裏側から帰還した人々1613-2023(慶長遣欧使節ーサン・ファン・バウティスタ号(模型)の廃材から)」が開催されている。
青野文昭は1968年宮城県仙台市生まれ。1990年代より一貫して 「修復」をテーマとし、空き地や海岸などで拾った廃棄物を、その欠損部分や使われた痕跡を手がかりに 「なおす」方法を用いて作品を制作。家具や自転車、日用品など異なるもの同士を接合・復元する過程で他者の記憶に向き合い、知識や想像力によって新しいかたちを与え、「もの」に宿る念を引き出すことを試みている。自身も被災者となった2011年3月の東日本大震災以降は、津波によって壊れ、傷ついたものを「なおす」ことに集中的に取り組んできた。
本展は、1613年の 「慶長遣欧使節」を記念して再現され、東日本大震災の津波による被害で破棄された、船の模型「サン・ファン・バウティスタ号」の廃材を、旧石巻女子高校のOGを中心とする有志の団体から譲り受けたことがきっかけとなっている。青野は、「この廃材となった大量の材木に、同地域の様々な因縁を感じながら、新しいかたちにして痕跡を残していきたい」という。
会期:2023年8月16日~9月10日
会場:秋保の杜 佐々木美術館&人形館 1階展示室
住所:宮城県仙台市太白区秋保町境野字中原128-9
電話:022-797-9520
開館時間:10:00~17:00
休館日:月(祝日の場合は翌日)
観覧料:一般 800円 / 学生 400円 / 中学生以下 無料