1980年代末より映像作家、グラフィックデザイナー、VJ、文筆家、キュレーターなど多岐にわたる活動を展開する現“在”美術家・宇川直宏(1968〜)。その個展「宇川直宏展 FINAL MEDIA THERAPIST @DOMMUNE」が東京・練馬の練馬区立美術館で開催される。会期は9月10日~11月5日。
宇川は、1990年代末より活動の舞台を現代アート表現にも拡張し、国内外で様々な作品を発表してきた。2010年には世界に先駆けてライブストリーミング・チャンネル「DOMMUNE(ドミューン)」を開局し、毎夜、多種多様なトーク、DJプレイ、ライブやトークセッション等を世界に配信。国内外の先端的なアートシーンに大きな影響を与えてきた。
本展は、13年間のDOMMUNEの膨大な番組アーカイブを紹介するとともに、それらの映像を素材として、絵画や立体作品など他のメディアに拡張・変換・創造し、“描く”という行為の歴史的なアップデートを図るもの。
その過程で介在するのは、宇川自らだけでなく、日々の配信行為にまつわる視聴者と同じく、様々な年齢・多様な背景を持つ人々、そして人工知能。アーカイブの様々な可能性を探るとともに、近年広く普及し始めた生成AIによる画像生成にも着目し、描くとは何か、今世紀的な作家性や作品のあり方とは何か、もしくはそこから創出される価値とは何かなど、“近代・現代・現在美術”を新たにとらえ直すプロジェクトとなる。
また、ブロックチェーンやスマートコントラクトによる所有や販売などのプロセスを独自考察し、伝統的なメディアである絵画と同時に、NFT作品の制作も実施。ほかにも、会期中には美術館を舞台としてライブ・ストリーミングを行い、さらなる情報の蓄積を目にしながら番組に参加することができるという。
毎日大量の人々が行き交うプラットフォームであり、芸術/文化情報の泉源である「DOMMUNE」。このメディアを様々に変換し、時空を錯綜しながら眺める試みは、Web3.0以降の社会を取り巻く様々な問いを、更に深める機会にもなるだろう。