現代でもっとも革新的と言われるアーティストのひとり、デイヴィッド・ホックニー(1937〜)。その日本における27年ぶりとなる大規模な個展が東京都現代美術館で開催される。会期は7月15日〜11月5日。
ホックニーはイングランド北部・ブラッドフォード出身のアーティストだ。同地の美術学校とロンドンの王立美術学校で学んだのち、64年にロサンゼルスに移住。アメリカ西海岸の陽光あふれる情景を描いた絵画で一躍脚光を浴びた。60年以上にわたり、絵画、ドローイング、版画、写真、舞台芸術といった分野で多彩な作品を発表し続けており、現存画家のオークション記録も保有していることで知られている。
現在はフランスのノルマンディーを拠点に精力的に新作を発表。2017年には生誕80年を記念した回顧展がテート・ブリテン(ロンドン)、ポンピドゥー・センター(パリ)、メトロポリタン美術館(ニューヨーク)を巡回し、テート・ブリテンでは同館の最高記録となる約50万人が来場するなど、その作品は世界中が注目している。
全8章で構成される本展は、イギリス各地とロサンゼルスで制作された多数の代表作に加えて、近年の風景画の傑作「春の到来」シリーズや新型コロナウイルスによるロックダウン中にiPadで描かれた全長90メートルにもおよぶ新作まで約120点の作品が展示される。
また、ホックニーの故郷であるイギリス・ヨークシャー東部で制作された、幅10メートル、高さ3.5メートルの油彩画《春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年》(2011)は、今回日本初公開となる。同じく日本初公開となる大判サイズのiPad作品12点も、本作にあわせて展示されるという。
本展において世界初公開となるのは、今年86歳を迎えるホックニーによる自画像だ。本作はホックニーの「いま」を映し出した注目の作品のひとつと言えるだろう。
いまなお現代美術の第一線で活躍し、新作を発表し続けるホックニー。代表作からは美術表現を模索し続けるその好奇心を、コロナ禍で制作された最新の作品からは、国や文化、世代の違いを越えて、同じ時代を生きている我々鑑賞者にしか感じ取ることができないメッセージを受け取れる展覧会となるだろう。ホックニーの世界を体感できる貴重な本展をどうか見逃さないでほしい。