2022.8.5

瀬戸内国際芸術祭から塩田千春、横尾忠則まで。今週末に見たい展覧会ベスト6

今週開幕する/閉幕する展覧会や芸術祭のなかから、とくに注目したい6つをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

瀬戸内国際芸術祭2022の展示風景より、ヘザー・B・スワン+ノンダ・カサリディス《海を夢見る人々の場所》(2022)
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夏会期の新作が登場。瀬戸内国際芸術祭2022(瀬戸内海各所)

展示風景より、ニコラ・ダロ《ナビゲーション・ルーム》(2022)

 瀬戸内海の島や周辺港を会場に、3年おきに開催される日本最大規模の国際芸術祭「瀬戸内国際芸術祭」が今年も開催されている。同芸術祭の夏会期は8月5日からスタート。これにあわせ、夏の新作も登場した。

 女木島ではニコラ・ダロ《ナビゲーション・ルーム》(2022)が完成。目の前に海を望む海岸の家で展開されている作品で、作品設置まで現地を訪れられなかったというダロは、想像のなかでの旅を通じて本作をつくりあげた。鑑賞者はベンチに座り、音とともに動く作品を外の風景と溶け合わせながら、個人個人がそれぞれの地図に思いを馳せることになる。

 豊島では冨安由真《影たちのみる夢(Remains of Shadowings)》(2022)が新作として登場。冨安は小泉八雲の短編小説『和解』から着想を得て作品を制作。物語を与えるように空き家を改装し、建具を入れたり、廃材を散らばらせたりすることで、現実と非現実のはざまを創出した。

展示風景より、冨安由真《影たちのみる夢》(2022)

 小豆島の名勝として知られる寒霞渓には、青木野枝が展望台としての機能を持つ作品《空の玉/寒霞渓》(2022)を設置。球体のなかに入れば、遠く田ノ浦半島を望むことができる。

展示風景より、青木野枝《空の玉/寒霞渓》(2022)

会期:2022年4月14日~11月6日
会場:直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島ほか
住所:香川県香川県高松市サンポート1-1-3F(高松港)
電話:087-813-2244(瀬戸内国際芸術祭総合案内所)
開館時間:会場によって異なる休館日    会場によって異なる
観覧料:3シーズンパスポート 一般 5000円 / 16〜18歳 3100円(当日現地販売のみ、要身分証) / 15歳以下鑑賞無料(一部作品、施設を除く)
1シーズン(春・夏・秋)パスポート 一般 4200円 / 16〜18歳 2600円(当日現地販売のみ、要身分証) / 15歳以下鑑賞無料(一部作品、施設を除く)
※購入方法は公式サイトへ

街の記憶を導き出す糸。塩田千春「巡る記憶」(別府市内)

展示風景より、《巡る記憶―中華園》(2022、部分)

 ベルリンを拠点に国際的に活動するアーティスト・塩田千春が、個展形式の芸術祭「in BEPPU」の舞台としても知られる大分県別府市の街中2ヶ所を舞台に個展を開催している。

 予測不可能で困難な時代において私たちが生きる意味を問い、人々の心に希望のあかりを灯すプロジェクトになることを目指すこの個展。その展示会場は、30近い候補場所から選ばれたという、食品卸問屋の倉庫だった「BEP.Lab」と中華料理屋「中華園」の跡地だ。

 「BEP.Lab」では職員が休憩するための場所として使われていた和室でインスタレーション《巡る記憶―草本商店》(2022)を展開。各階には編み込まれた白い糸が張り巡らされ、そこからは水が滴る。水滴は水盤を揺らし、またその水が循環し、水滴となる。塩田がここまで大規模に水を使った作品は、今回が初めてだ。

展示風景より、《巡る記憶―草本商店》(2022、部分)

 「中華園」の跡地の《巡る記憶―中華園》(2022)は、店舗の記憶を甦らせるように、実際に使われていた円卓や膨大な食器、岡持ち、そして棚などの家具などが赤色のロープによってつながれ、空間を埋めている。宙を舞う食器の数々は、往時の活気をいまに伝えるようだ。

展示風景より、《巡る記憶―中華園》(2022、部分)

会期:2022年8月5日~10月16日
会場:大分県別府市中心市街地
住所:別府市北浜1-2-28 草本ビル2・3階(BEP.Lab)、別府市元町5-7(新中華園ビル)
開館時間:11:00~18:00 ※入場は17:30まで。最新情報は公式ウェブサイトにて要確認 
休館日:火水 
料金:無料

貴重な美術品の背景を読み解く。特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」(東京藝術大学大学美術館

 東京藝術大学大学美術館で、特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」が開催される。宮内庁三の丸尚蔵館が収蔵する皇室の珠玉の名品と、東京藝術大学のコレクションを通じて、日本美術の豊かな世界を展覧する。

 本展は、特徴的な歴史的背景を持つ2館ならではのアプローチで、貴重な美術品の数々の魅力をわかりやすく紹介するもの。美しい絵画から愛らしい置物まで、多種多様な作品82件を、「文字からはじまる日本の美」「人と物語の共演」「生き物わくわく」「風景に心を寄せる」という4つのテーマに分けて展示する。

 とくに見どころは、宮内庁三の丸尚蔵館収蔵品として、初めて国宝指定された《春日権現験記絵》《蒙古襲来絵詞》《唐獅子図屏風》《動植綵絵》《屏風土代》の5件だ。そのなかでも、桃山時代を代表する絢爛豪華な障壁画《唐獅子図屏風》、そして約10年の歳月をかけて、様々な生き物や植物を緻密に描いた伊藤若冲の傑作《動植綵絵》が、全30幅のうち10幅も揃い、必見の作品となる。

会期:2022年8月6日~9月25日
会場:東京藝術大学大学美術館
住所:東京都台東区上野公園12-8
電話:050-5541-8600
開館時間:10:00~17:00(入館は閉館30分前まで)※状況により入場制限などを実施する可能性あり。最新情報は公式ホームページにて要確認
休館日:月(9月19日は開館)
観覧料:一般 2000円 / 大学・高校生 1200円 / 中学生以下無料

開館10周年記念展。「横尾さんのパレット」(横尾忠則現代美術館

横尾忠則 カミソリ III 2006 作家蔵(横尾忠則現代美術館寄託)

 横尾忠則現代美術館では、開館10周年記念展「横尾さんのパレット」を開催。本展は、横尾忠則作品の特徴である鮮やかな色彩に着目し、約40年の画家活動を振り返る。

 本展は、「ピンクガール」「Y字路」「A.W. Mandala」「寒山拾得」など、横尾の歴代の代表的なシリーズを含む作品をテーマや様式から解放し、赤・青・黄色といった色に分類して展示。展示室をパレットに見立てたインスタレーションで、「ヨコオワールド」を再構築する。

 色とりどりの絵具がのった紙皿やペーパーパレットは横尾の制作の副産物だ。横尾は、床に並んだ絵具のチューブから直感的に色を選び取り、パレットに押し出すその行為に、霊感を期待するという。また、本展では、使用済みのパレットや公開制作で使用した絵具など、作品が生まれる背景も紹介する。

会期:2022年8月6日~12月25日
会場:横尾忠則現代美術館
住所:兵庫県神戸市灘区原田通3-8-30
電話:078-855-5607
開館時間:10:00~18:00(入場は閉館30分前まで)※最新情報は公式ウェブサイトにて要確認休館日月(9月19日、10月10日は開館)、9月20日、10月11日
観覧料:一般 700円 / 大学生 550円 / 70歳以上 350円 / 高校生以下無料

「価値」とは何か。ライアン・ガンダー「Killing Time」(TARO NASU

ライアン・ガンダー Just be 2022
Photo by Ryan Gander Studio
©︎ Ryan Gander Courtesy of the artist and TARO NASU

 東京オペラシティ アートギャラリーで「ライアン・ガンダー われらの時代のサイン」(7月16日~9月19日)を開催しているライアン・ガンダー。そのTARO NASUの個展「Killing Time」は今週末まで。

 TARO NASUでのガンダーの個展は、2018年の「Moonlighting」展以来4年ぶり。「価値」について触れる本展の開催に際して、ガンダーは次のテキストを寄せている。

 「お金は、われわれ自身の主体性や、変化のきっかけが延々とつづいて成りたつ人生に先んじては存在していない。これまで出会った数多くの人が、硬貨に対して、理屈を超えたプラスアルファの価値を見いだしていた。ねじ回しの代用、センチメンタルな思い出の品、記憶のよすが、縁起かつぎの記念品、珍しいコレクターアイテム、ものごとを決めるために表が出るか裏が出るか……または『行動』か『いったん休め』かと投げる道具。(ライアン・ガンダー)」

会期:2022年7月9日~8月6日
会場:TARO NASU
住所:東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル4F
電話:03-5786-6900
開館時間:11:00~19:00 ※最新情報は公式ウェブサイトにて要確認
休館日:日、月、祝
観覧料:無料

沖縄の過去、現在、未来について。「PARADISE OKINAWA」(MISA SHIN GALLERY

照屋勇賢 左から《Untitled》《Untitled》(ともに2018)

  沖縄出身のアーティスト、照屋勇賢、石垣克子、伊波リンダ、上原沙也加によるMISA SHIN GALLERYのグループ展「PARADISE OKINAWA」は今週末まで。沖縄が日本に復帰してから今年で50年を迎えた。観光客の激増、開発の波と自然環境の破壊への危惧、米軍基地に派生する問題など、復帰後の50年で沖縄の風景は一変し、いまも変化のなかにある。本展では4人のアーティストが、それぞれの手法と多様な視点で、沖縄の過去、現在、未来を考える。

 現在、ベルリンを拠点とする照屋勇賢は、折り曲げて凹凸を施した紙に文字を切り込んだ水彩レリーフなど沖縄で制作した作品を展示。石垣克子は、米軍基地や米軍用の住宅、 戦後変化をしてきた建物や街並みなど沖縄の風景を描きとどめようと試みる。

 基地が身近にあった伊波リンダは、米軍基地に勤務するハワイ生まれの沖縄人2世の父親を持ち、演出的な方法で沖縄を表現した「矛盾の中で眠る」シリーズ、沖縄に駐留するアメリカ兵の日常やポートレイトを撮影した「Design of Okinawa」シリーズなどで知られる。上原沙也加は生活から切り離された沖縄のイメージへの違和感から、沖縄という場所が重ねてきた複数の時間を読み取る写真を制作している。

会期:2022年6月23日~8月6日
会場:MISA SHIN GALLERY
住所:東京都港区南麻布3-9-11 パインコーストハイツ1階
電話:03-6450-2334
開館時間:12:00~19:00 ※最新情報は公式ウェブサイトにて要確認
休館日:日、月、祝
観覧料:無料