2021.5.4

田中功起の映像作品を手話・字幕付きで楽しむ。東京国立近代美術館がオンラインで無料公開

東京国立近代美術館が所蔵作品のひとつである田中功起《ひとつの陶器を五人の陶芸家が作る(沈黙による試み)》(2013)の「手話とバリアフリー字幕版」を制作。2022年3月31日まで映像をオンラインで無料公開している。

田中功起《ひとつの陶器を五人の陶芸家が作る(沈黙による試み)》(2013)の「手話とバリアフリー字幕版」より

 東京国立近代美術館が、所蔵作品のひとつである田中功起《ひとつの陶器を五人の陶芸家が作る(沈黙による試み)》(2013)の「手話とバリアフリー字幕版」を制作。現在、オンラインで無料公開されている。

 

 この作品は、第55回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展(2013)で特別表彰に輝いた田中の日本館での展示「抽象的に話すこと-不確かなものの共有とコレクティブ・アクト」の出品作のひとつ。それぞれの出自や境遇、考え方の異なる5人の中国の陶芸家たちが、ひとつの陶器を協働で制作するプロセスを記録したドキュメンタリー作品だ。

 今回、同館では作者である田中の全面的な協力のもと、この作品に手話と字幕を付け加えた「手話とバリアフリー字幕版」および「手話についての解説動画」を制作した。その背景にあったのは、ひとりのろう者の「美術館で映像作品を楽しみたい」という言葉だったという。

 美術館で展示される映像作品は、一般的な映画のBD・DVDなどとは異なり、バリアフリー字幕や手話による映像が付帯する例は少ない。同館では「現状、ろう者・難聴者にとって、美術館で映像作品を鑑賞することは高いハードルがある」としており、アクセシビリティを確保することを目指し、今回の映像制作・公開が実現した。

 映像では5人の陶芸家のうち男性3人を野﨑誠(手話ナビゲーター)、女性2人を佐沢静枝(手話ナビゲーター)が演じており、手話監修は木下知威(手話マップ)、監督は田中が担当した。オンラインでの無料公開は2022年3月31日まで。この機会にろう者や難聴者だけでなく、手話やバリアフリー字幕に興味のある人もアクセスしてみてほしい。

 なお東京国立近代美術館では、「MOMATキュレーター・トーク」と題した研究員による所蔵品解説動画もYouTubeで複数公開。日本語字幕版もラインナップされているので、こちらもあわせてチェックしたい。