建築家・田根剛による設計で、元シードル工場を改修し、2020年7月にグランドオープンした青森県の弘前れんが倉庫美術館。2021年度、同館はケリス・ウィン・エヴァンスによる新作のコミッションワークを基点に、複数のアーティストの作品からなる展示を2期に分けて構成する。
春夏プログラム(第1部)のタイトルは「りんご宇宙 ―Apple Cycle / Cosmic Seed」。「りんご」をめぐる豊かな思考と想像に着目し、国内外のアーティスト8名の多様な作品を紹介する。
軸となるケリス・ウィン・エヴァンスの新作コミッションワークは、2期にわたって展示。「植物としてのりんごの生」「りんごからシードルへの加工・生産の残像」「原罪の比喩(欲望・原動力)」「ユリイカ(わかった!)の瞬間」「ニュートンの万有引力から導かれる宇宙の自然法則、太陽の周囲をめぐる軌道」など、りんごをめぐる思考と発想から生み出された高さ約7メートルの彫刻作品が初公開となる。
加えて、雨宮庸介、タカノ綾、和田礼治郎、潘逸舟(ハン・イシュ)が本展にあわせた新作を発表するほか、河口龍夫、笹本晃も参加。それぞれの代表作から近作を含め、絵画や映像、インスタレーション、パフォーマンスなど多様な作品群が集結する。
また、新型コロナの影響で展示が遅延していたジャン=ミシェル・オトニエルの新作コミッションワークもついに公開。直径2メートルにおよぶ大型のガラス作品が、奈良美智《A to Z Memorial Dog》とともに来場者を迎える。
西洋美術史において、豊穣や生命の儚さなどの象徴として描かれてきたりんご。しかし本展ではそうした表象だけでなく、りんごを素材とした新たな創作のアプローチや、宇宙規模に展開される豊かなイマジネーションのかたちを展覧。「弘前エクスチェンジ#03」ではりんごに関する地元の研究・取り組みを紹介するなど、様々な角度からりんごの可能性に触れる機会となる。