サウンドデザインや楽曲制作、キュレーションなどと幅広く活動を展開する松本望睦(まつもと・のぞむ)と、複数の素材を用いてペインティングや立体作品、絵本などを制作する趙里奈(ちょう・りな)。その二人展「you had me alone」が、東京・目白のTALION GALLERYで開催されている。会期は12月27日まで。
松本は、音のなかでもとりわけ声やそれが発される母体をテーマとして制作をスタート。テクノロジーの変化とともに生じる社会生活の新たな様式や人体への作用について、社会哲学的考察を織り込んだストーリー、音響、パフォーマンスなどが一体となった作品へと発展させている。
いっぽう趙の作品の多くには、朴訥な色調と筆触のなかにつぶらな瞳を持つ生き物の姿が描かれる。それらは寓話の一場面のように切り取られ、切実に何かを見つめながら画面のなかに存在している。
スーパーマーケットで売られていたぬいぐるみに刺繍で記された"you had me at aloha”(初め[の挨拶]から心は決まっていた)を、”you had(left)me alone”(私を置き去りにした)と誤読したことから、本展のアイデアは始まったという。本展では、松本と趙のふたりが、2020年に訪れた自己隔離期間におけるバーチャルワークをめぐり、ロマンティックなゲシュタルト崩壊を引き起こすことを試みている。