風景のなかに自作の地蔵を建立し写真に収める「地蔵建立」や、日本美術史上の名作を醤油で描いてリメイクする「醤油画資料館」など、ユーモアを交えながら歴史や社会を鋭く批評するシリーズで知られるアーティスト・小沢剛。
その東北地方初となる大規模個展「小沢剛展 オールリターン ―百年たったら帰っておいで 百年たったらその意味わかる」が、弘前れんが倉庫美術館で開催される。会期は10月10日~20201年3月21日。
近年、グローバルに活躍した近現代の人物を題材に、事実とフィクションを交えて絵画、映像、音楽で構成される「帰って来た」シリーズに取り組む小沢。同シリーズではこれまで野口英世、藤田嗣治、岡倉天心などに注目し、世界各地に取材に訪れて現地のアーティストたちと共同制作を行ってきた。
本展では、弘前ゆかりの人物「S.T」を題材とした新作に加え、シリーズ全5作品を新たに構成して一挙に公開。歴史上の偉人たちの知られざる側面に光を当て、文化の違いや時空を超えて、私たちの生きる「いま」についての思索を促す「帰って来た」シリーズを包括的にとらえる。
新作は18年からリサーチやワークショップを経て、イランの看板職人やミュージシャンらの協力を得て制作。本展では、約2年の歳月をかけて完成した絵画と映像などを、吹き抜けのダイナミックな空間に展開する。
また、美術館の空間を生かした劇場型のインスタレーションでシリーズ全5作品を展示するほか、ドキュメント資料も初公開。各地のコーディネーターや研究者、ミュージシャンとともにつくり上げられたシリーズの旅の記録写真や参考書籍を見ることができる。
本展は、コロナ禍で旅や直接的な交流が制限されるなか、協働やコミュニケーションのあり方、そして芸術作品のかたちや土地や人とのつながりについて考える機会となるだろう。