津田青楓(1880~1978)という画家をご存知だろうか?
青楓は京都生まれ、1896年に生活の糧として図案制作を始めたことから画家人生の第一歩を踏み出した。歴史画家・谷口香嶠に師事して日本画を学び、1907年に安井曾太郎とともに渡仏する。アカデミー・ジュリアンで修行を積み、帰国後の14年には二科会の創立メンバーになるなど洋画の世界で活躍。その後は洋画を離れ、文人画風ののびやかで滋味豊かな作品世界を展開した。
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そんな青楓の作品や生涯をまとまったかたちで紹介する初の回顧展「生誕140年記念 背く画家 津田青楓とあゆむ明治・大正・昭和」が、練馬区立美術館で開催される。会期は2月21日~4月12日。
青楓は文豪・夏目漱石にも愛され、漱石に絵画を教えたほか、本の装幀も数多く手がけた。加えて写生に基づく創造的な図案の試みや、随筆・画論など多岐にわたる文筆活動、そして良寛研究とその成果ともいえる書作品など、幅広い交流と旺盛な制作活動でも知られている。
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また青年時代には日露戦争に従軍し、203高地での激戦の凄惨な体験を赤裸々に文芸雑誌『白樺』に発表。後年、昭和初期には「二科展」に社会思想を背景とした作品を発表し、物議を醸した。自由を求めて時代に対峙し続けた青楓の作品は、その時代を知るための歴史資料としての側面も持ち合わせているといえる。
本展の軸となるのは、青楓がもっとも影響を受けた夏目漱石と経済学者の河上肇、それに私淑する良寛和尚の3人。作品や関連資料約250点を通して、明治・大正・昭和の時代を生きた青楓の生涯を振り返る内容となっている。
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(C) Rieko Takahashi