近代以降に生まれた「日本画」という言葉。近世(幕末)までの日本においては「やまと絵(和画)」と呼ばれ、水墨画はその対義語である「唐絵(漢画)」と認識されつつ、より公的な性格を帯びていた。その双方を継承した近代日本画は、西洋美術の移植でもなく伝統美術の守旧的な復興でもない新たな伝統主義美術を模索するものであった。
第二次世界大戦敗戦後、「日本画滅亡論」に唱えられるように大きく揺らいだ国民的絵画としての日本画像。しかしながら国家主義の退潮したその時代に、墨の表現の可能性を模索することは、近代の様々な制約から解放された表現の地平を拓くパラダイムシフトであったという。
現在、富山県水墨美術館では、開館20周年記念展として「墨画×革命 戦後日本画の新たな地平」を開催中(〜12月8日[前期]、12月10日~2020年1月13日[後期])。本展は、戦後に制作された墨画的表現を概観するもの。加山又造や東山魁夷、丸木位里をはじめとする様々なアプローチを見せた画家たちの群像を通じて、戦後日本画のなかでの墨画の性格や、水墨画の伝統の受容・変容をたどることができる。