2019.10.30

倉俣史朗の名作が復刻。「How High the Moon」が現代の技術で蘇る

日本を代表するデザイナー・倉俣史朗はいくつもの名作をこの世に残した。その代表作のひとつである「How High the Moon」が復刻。「復刻・倉俣史朗Ⅰ」展にて展示・販売される。

 

復刻された「How High the Moon」
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 日本を代表するデザイナー・倉俣史朗(1934〜91)。その代表作である「How High the Moon 」(1986)が復刻される。

 倉俣史郎は、空間デザインや家具デザインの分野で60年代初頭から90年代にかけて活躍したデザイナー。株式会社三愛宣伝課を経て、65年には自身のクラマタデザイン事務所を設立し、高松次郎や横尾忠則らとコラボレーションした。その後、81年にエットレ・ソットサスの誘いでデザイン運動「メンフィス」に参加。数々の名作をこの世に残したことで知られる。

 近年では、倉俣が設計した寿司店「きよ友」のファサードとインテリアを香港の美術館「M+」(エムプラス)が収蔵するなど、いまなお高い存在感を放っている倉俣。

 今回復刻される「How High the Moon 」は、建築素材であるエキスパンド・メタルで構成された輪郭がそのまま構造となった、デザイン史においても重要とされる一脚。伝統的なアームチェアのフォルムでありながら、それまで家具に使われることのなかった素材を用いることで、倉俣らしい「軽やかさ」や「儚さ」が表現されている。

「How High the Moon 」

 同作はかつて、日本ではIDÉE(1986〜97)でも販売され、海外ではvitra.(1986〜2009)で製造・販売されていた。今回は、クラマタデザイン事務所監修のもと、オリジナルの図面にその後の改良も加味した仕様で復刻。当時の鉄工所はすでに存在しないため、同作の2シーター版など、長きにわたり倉俣作品に関わってきた鉄工所が製作を担当したという。

「How High the Moon 」の製作風景

 日本で製作されたモデルは、エキスパンド・メタルの先端と先端を「ろう付け」の技法でつないでいるのが特徴。当時のメッキではなく、環境に配慮したニッケルサテンでオリジナルに近い仕上げとなっている。

 本作は、ギャラリー田村ジョーの第3回企画展である「復刻・倉俣史朗Ⅰ」展において展示・販売。これに加えて、「Sing、Sing、Sing」と「Apple Honey」の2種類の椅子も復刻される。いまなお色褪せることのない倉俣作品に触れる絶好の機会だ。

「How High the Moon 」の部分
左から、「How High the Moon 」と「Sing、Sing、Sing」