華やかで明るい色彩と軽妙な筆致の作品で、多くの人々を惹きつける画家ラウル・デュフィ(1877~1953)。その初期から晩年までの絵画に加え、テキスタイル・デザインや関連資料全152点を紹介する展覧会「ラウル・デュフィ展」が、パナソニック汐留美術館で開催されるている。会期は12月15日まで。
画業の形成期には印象派やフォーヴィズム、セザンヌの影響を受け、時代の空気に反応した作品を手がけたデュフィ。1920年前後には南仏に滞在し、明るい色調と軽快な輪郭線による独自の画風を獲得。本展では音楽や社交をモチーフに、生きる喜びを歌い上げる絵画を見ることができる。
加えて注目したいのは、テキスタイル・デザインの数々だ。「モードの帝王」と呼ばれるファッションデザイナーのポール・ポワレは、デュフィが手がけた木版画を高く評価し、テキスタイル製作所を設立してデュフィと共同で布地の開発を開始。この活動は短期間だったが、デザインの仕事に関心を高めていたデュフィはビアンキーニ=フェリエ社と契約し、布地の図案を提供した。
本展ではこうしたデザイン原画や下絵、当時のオリジナルの絹織物、版木などの資料が多数出品。また、イギリスの舞台衣装デザイナー、アンソニー・パウエルによる『マイ・フェア・レディ』の衣装など、デュフィ・デザインのテキスタイルを用いたドレス20点が並ぶ。
そのほかにもバラを始めとする花々や昆虫、そして都市生活の様子から幾何学模様まで、テキスタイル・デザインに新たな境地を開いた図案の数々も紹介。本展では、絵画とテキスタイル・デザインというふたつの媒体を軽やかに越境する作品群を展観し、デュフィが目指した表現の本質とその装飾性の意義を見ることができるだろう。