瀧口修造(1903~1979)は富山県生まれ。慶應義塾大学で西脇順三郎に師事し、シュルレアリスム詩の創作や、アンドレ・ブルトンの著作の翻訳などを行った。戦後は美術評論の執筆やタケミヤ画廊で展覧会の人選を行い、60年以降は「造形的実験」と称される造形作品の制作に没頭した。
いっぽう加納光於(1933〜)は独学で銅版画の技法を学び、実験的な作品で50年代から国内外で評価を得る。54年に瀧口と出会い、56年にはその推挙によってタケミヤ画廊で初の個展を開催。瀧口亡き後はその眼差しを意識しながら、色彩あふれる絵画作品に力を注いだ。
このふたりの関係性に焦点を当て、強く共鳴し合った精神と創造の全貌を紹介する展覧会「瀧口修造/加納光於《海燕のセミオティク》2019」が、富山県美術館で開催される。会期は2019年11月1日~12月25日。
30歳の年の差ながら四半世紀にわたる交流を持ったふたり。本展では、共同で制作した詩画集とその原画、原稿、書簡など、豊富な作品と資料でその軌跡を紹介する。
加えて絵画や版画、オブジェなど加納の代表的な作品も展示。私家版限定8部のみ制作された最初期の版画集『植物』(1955)から、37点組の油彩による最新作《海燕のセミオティク》(2018)まで約250点を見ることができる。また、瀧口によるデカルコマニーの代表作《私の心臓は時を刻む》(1962)の全100点も一堂に集結する。