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NEWS / REPORT - 2019.9.11

デザインと日本美術の関係とは? 富山県美術館で「『日本の美 美術×デザイン』-琳派、浮世絵版画から現代へ-」が開催中

日本の美術にみる装飾性・デザイン性に着目する展覧会「『日本の美 美術×デザイン』 -琳派、浮世絵版画から現代へ-」が現在、富山県美術館で開催中だ。琳派、浮世絵版画から現代絵画、ポスターに至るまで、多様な美の様相を紹介する本展の見どころをレポートで紹介する(会期中、複数回展示替えあり)。

富山県美術館

 富山県立近代美術館を前身に、2017年8月に「アートとデザインをつなぐ美術館」として全面開館した富山県美術館。同館で現在、「『日本の美 美術×デザイン』-琳派、浮世絵版画から現代へ-」が開催中(〜10月20日)だ。

会場風景より、手前が伊藤若冲《玄圃瑤華》(1768、東京国立博物館蔵)《若冲画帖》(明治時代、芸艸堂蔵)

 「デザインを通して日本美術を見たらどう見えるのか? そんなテーマが本展のベースです。そして、日本では古くから、デザイン的な目線で物事を見る文化があったということを伝える展覧会でもあります」。そう話すのは、本展の企画者である富山県美術館主幹の八木宏昌だ。

 本展はまず、装飾画の典型から、琳派、伊藤若冲の拓版画などを紹介する第1章「琳派と近世江戸の美を中心に」で幕を開ける。

会場風景より、宗達工房《四季草花図屏風》(1630-40、光ミュージアム蔵)
会場風景より、中村芳中『光琳画譜』「仔犬」(1802、千葉市美術館蔵[ラヴィッツ・コレクション])
会場風景より、作者不詳《誰ヶ袖の図》(1573-1612、光ミュージアム蔵)

 本章に並ぶのは、近世江戸で好まれた草花図がモチーフとなった宗達工房の《四季草花図屏風》(1630-40)、人物を登場させずに衣装からその持ち主を想像するというユニークな《誰ヶ袖の図》(1573-1612)、ランダムに描かれた扇面がコラージュのような効果を生み出す《四季流水扇面散図》(明治時代)といった、和のデザインが色濃く感じられる近世江戸の美術とそのスタイルを継承した作品。黒漆の地に、側面全体を使って太鼓橋とそこに咲く紫陽花を描く《紫陽花螺鈿蒔絵重箱》(17世紀)は、コンパクトサイズながらもダイナミックな構図と装飾が見どころだ。

 またここでは、丸みのあるフォルムと「ゆるキャラ」を思わせる脱力の筆致で現代再び脚光を浴びる中村芳中による「仔犬」も見ることができる。

会場風景より、手前が鳥居清信《秘画》(1688-1704、北九州市立美術館蔵)
会場風景より、手前が歌川広重《名所江戸百景 する賀てふ》(1856、光ミュージアム蔵)

 続く2章のテーマは、様々な空間表現や構図、形のないものを図案化する際の斬新なアイデアが光る浮世絵版画が集まる「浮世絵版画のデザイン力」。八木は本章で、当時西洋になかった描画技法として3つのことを挙げる。まずは、陰影やグラデーションとして用いるのではなく、ひとつの「色」として確立して用いた木版画の黒色。次に、西洋の線遠近法とは異なる独自の構図だ。「町を見下ろす視点、そして遠くに見える山とがユニークな構図で描かれた《名所江戸百景 する賀てふ》(1856)をはじめ、独特の遠近法に注目してほしいです」と八木は話す。

会場風景より、歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》(1857、光ミュージアム蔵)
会場風景より、葛飾北斎《富嶽三十六景 神奈川沖浪裏》(1831-34、北九州市立美術館蔵)

​ そして3つ目の技法が、明確な形を持たない水の流れや雨を図案化する試みだ。例えば、歌川広重の傑作《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》(1857)では、地上に降り注ぐ雨細かな線で描画され、葛飾北斎の代表作として世界で知られる《富嶽三十六景 神奈川沖浪裏》(1831-34)では、強弱を極端に強調した激しい曲線によって波を描いている。「雨を線で描く方法は、いまでは一般的かもしれません。その元祖が広重なんです」。

 これらの作品に見られる平面性や大胆な誇張表現は、その後の大正のデザイン、戦後のポスターやマンガ、アニメの世界へと受け継がれていく。

会場風景より、神坂雪佳『百々世草』(1909-10刊、千葉市美術館蔵[ラヴィッツ・コレクション])
会場風景

 そして、明治時代。産業構造が変化する日本では、一部の絵師たちは工芸意匠などを手がける図案家として活躍するようになった。そんななか、ともに20世紀初頭の京都で図案教育に取り組み、工芸デザインの発展に尽力したのが洋画家の浅井忠、琳派を復興した神坂雪佳だった。第3章「絵師から図案家へ」では、京都の工芸において重要な役割を果たしたふたりにフォーカスする。

 ここでは、2001年、ファッションブランド・エルメスが発行する雑誌『LE MONDE D’HERMES』の表紙を飾った、雪佳の『百々世草』原画「八つ橋」(1909-10)や、同じく雪佳によるユーモラスで温かみのある表現がときに笑いを誘う『滑稽図案』、そしてアール・ヌーヴォー、琳派、大津絵などの表現を取り入れた浅井独自の表現のスタイルが際立つ《梅[蒔絵文庫図案]》などを堪能したい。

会場風景より、左から福井江太郎《視》《風》(ともに2013、作家蔵)

 西洋美術の積極的な移入により、その影響とともに新たな日本美術を生み出す動きが生まれた明治期以降。近代日本画の発展に尽くした横山大観や菱田春草をはじめ、そこには琳派をはじめ伝統的な日本の美を取り入れた表現も多く見られた。第4章「近現代日本美術の装飾美」が見せるのは、明治以降に生まれた装飾的かつ革新的な表現と、日本美術を見直し、その要素を現代の絵画へと生かす作家たちの表現だ。

会場風景より、手前が山本太郎 絵:《狂言花子用素襖三世茂山千之丞ver.》(2018、茂山千五郎家蔵)
会場風景より、奥が本展のための新作、山本太郎 《清涼飲料水紋図屏風》(2019、作家蔵)

 会場にてそうした美術作品とシームレスに展示されるのが、日本美術をバックグラウンドに持つ日本の現代デザイン。第5章「現代デザインに生きる和の美」では、琳派から大きな影響を受けたことを公言し、自身のデザインに生かした田中一光はじめ、永井一正、佐藤晃一など、日本のグラフィック・デザインを代表するデザイナーらのポスターが一堂に揃う。

 こうして、日本美術に見る装飾性とデザイン性に着目する本展。琳派、浮世絵版画から現代絵画、ポスターまで、その多様な美のダイナミズムと接続性を体感できる展覧会になっている。

屋上庭園「オノマトペの屋上」

 なお、富山県美術館ではコレクションとして、ヘリット・トマス・リートフェルト、倉俣史朗らによる多彩な椅子、富山県生まれの美術評論家、詩人、画家として知られる瀧口修造にまつわる「瀧口修造コレクション」、そして同館収蔵のポスターコレクションから3000点を大型タッチパネルサイネージでデジタル展示する、チームラボ作「Digital Collection Wall」なども、企画展とあわせて楽しめる。また、佐藤卓デザインの屋上庭園「オノマトペの屋上」をはじめ、大人も子供も楽しめるスペースが多数あるため、家族連れにもおすすめしたい美術館だ。