高松市美術館で年に1度開催されてきた「高松コンテンポラリーアート・アニュアル」。9回目となる今年は「社会を解剖する」をテーマに碓井ゆい、盛圭太、照沼敦朗、加藤翼、村上慧の5名のアーティストを紹介する。会期は9月28日~11月4日。
女性としての目線で日常や過去の出来事をとらえてきた碓井は、47都道府県の郷土料理をモチーフとした手芸作品を日本地図上に並べた《gastronomy map》と《空(から)の名前》を出展する。糸によるドローイング・シリーズ「バグ・リポート」を手がける盛は、会期中に公開制作を実施。精緻に構成される作品に存在する糸のほつれは、完璧に見える社会にある誤りや欠陥としての「バグ」を思わせる。
また照沼は、世界を見渡すことを望む男の子「ミエテルノゾム君」と、現実が見えすぎることを嫌悪する女の子「ミエナイノゾミちゃん」の世界を、幅7メートルにおよぶ絵画やアニメーション作品で表現。大勢の人の協力を得て行う「引き興し」などで知られる加藤は、ネイティブアメリカンの居留地で行ったプロジェクトを元にインスタレーションを展開する。
そして、発泡スチロール製の家を背負いながら各地を歩くことで公と私の関係を考察してきた村上は、今回新たに「広告看板の家プロジェクト」を実施。会期中には館内にある本展の看板を住居とし、滞在制作を行う。
それぞれのアプローチで社会に切り込み「解剖する」ことで、その仕組みや実態を明らかにする5名の試み。本展は、社会における私たち自身の立ち位置についての再考を促すものとなることだろう。