「生」や「死」をテーマとした立体やインスタレーション、ドローイングなどを手がける大垣美穂子の個展「immortal moment」が、東京・新宿のKEN NAKAHASHIで開催される。会期は8月30日〜9月21日。
大垣は1973年富山県生まれ。95年に愛知県立芸術大学美術学部美術科油画専攻を卒業し、96年よりドイツ国立デュッセルドルフ・クンストアカデミーに留学。2004年に同大学を卒業後もドイツを拠点に活動。約14年間のドイツでの生活を経て、10年に拠点を日本に移した。デュッセルドルフやニューヨーク、ワシントン、京都、東京などで作品を発表するなど、国内外問わず精力的に活動を行っている。
解体したメルセデス・ベンツを無数のビーズで装飾し、かつて日本で多用されていた宮型霊柩車に仕立て、その内部に「死体」として鑑賞者を横たえる作品《before the beginning – after the end》(2003)、また自身の身体をモチーフに、「生きていることの実感」と「死を思うこと(メメントモリ)」の確認作業として、画面を覆い尽くすように点描した「Star Tale」シリーズなど、死や老いといった概念をダイナミックかつ壮麗に表現してきた大垣。
03年にはドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州のミュージアム・バーデンでの展覧会「第57回 ベルギッシェ・クンスト・アウスステールング」でオーディエンス賞を受賞。19年には、町田市立国際版画美術館で開催された「THE BODYー身体の宇宙」に参加。小宇宙(ミクロコスモス)としての人体と、大宇宙(マクロコスモス)を一つの空間で体現した「Milky Way」シリーズを発表し、注目を集めた。
本展では、大垣が、19年3月9日に逝去したパートナーでありアーティストの佐藤雅晴への看病を続けるなかで、大がかりな立体の制作ができない代わりに自宅で描き上げたというドローイングシリーズを見ることができる。無数の点が画面を埋め尽くす同シリーズは、小さな単位が集合となり、やがて概念や温度が生み出していくことに着目して制作されたという。画面には、いまだ訪れたことのないマッターホルンや年老いた女性の手など、大垣が憧れを抱くモチーフが描かれる。