古くから様々なかたちで美術作品に登場してきた人間の身体。人々の感性と知性と想像力は、解剖学から美術、占星術にいたるまで、多彩な身体のイメージを生み出してきた。
そんな身体の「小宇宙」とも言うべき世界を紹介する展覧会が、町田市立国際版画美術館で開催されている。本展では、15世紀の西洋古版画から現代日本のアーティストによる作品まで約140点を、時代の流れを追って見ることができる。
本展は、アルブレヒト・デューラー(1471~1528)ら美術家の作品からスタートし、版画・著作を中心に、理想の身体美の追求を展覧。また、身体美とは対照的な責め苦にあうキリストの「聖なる」体を、版画の数々から紹介する。
続く第2章では解剖学を軸に、幻想的な作例を紹介。アンドレアス・ウェサリウス(1514~64)の著書『人体の構造について』(1543)をはじめ、いまとは異なる観点から生まれた解剖図が一堂に会する。加えて、古代ローマの廃墟を描いたピラネージ(1720~78)の「建築解剖学」といえる作品群から、身体と建築の類縁関係を浮かび上がらせる。
そして第3章では、当時の占星術や人体観を伝える15・16世紀の版画のほか、感情や死生を「身体」に投影する大垣美穂子の立体作品を紹介。小宇宙(ミクロコスモス)としての身体と、大宇宙(マクロコスモス)の対比を見ることができる。
なお同館の常設展示室では、「彫刻刀で刻む社会と暮らし―戦後版画運動の広がり」が同時開催。こちらもあわせてチェックしたい。