「江成常夫写真展 花嫁のアメリカ 歳月の風景 1978―1998」が、神奈川の相模原市民ギャラリーで開催されている。江成常夫は1936年相模原市生まれの写真家。74年以降、一貫して「負の昭和」をテーマに活動を続けるほか、「フォトシティさがみはら」をはじめとした数々の写真賞の創設に関わっている。これまでに木村伊兵衛賞(1981)や土門拳賞(1985)、毎日芸術賞(1995)、紫綬褒章(2002)を受賞するなど、その評価は高い。
第二次世界大戦後の50年代、多くの日本人女性が進駐軍の関係者と結婚し、海を渡った。女性たちは「戦争花嫁」と呼ばれ、過酷な経済状況や人種差別、同じ日本人からの蔑視といった様々な困難に遭いながらも、強く美しく生きた。
江成は、そんな「戦争花嫁」の姿を写し、言葉に耳を傾けた《花嫁のアメリカ》を80年に発表。戦中戦後を生きた女性たちの姿と言葉は、歴史に血を通わせる戦後史の裏打ちと呼べるものとなった。
同作の撮影から20年後の90年代後半、江成は再び花嫁たちのもとを訪れ、撮影を敢行。そこで撮られた写真は、『花嫁のアメリカ 歳月の風景 1978―1998』(集英社、2000)としてまとめられた。相模原市は、2009年に同作の寄贈を受け、市の美術品として収蔵した。
本展は、新しい元号を迎えた今日、それらを改めて紹介するもの。戦争の時代であった昭和を生き、平成の時代にかけて受け継がれてきた花嫁たちの姿と言葉を、令和という新時代に再度提示している。本展を通じて、現代の国際社会や歴史、家族の在り方を問い直したい。