2019.8.22

「戦争花嫁」の姿をとらえ続けた写真家。
江成常夫の写真展が相模原市民ギャラリーで開催中

「負の昭和」をテーマに活動を続けてきた写真家・江成常夫の写真展が、神奈川の相模原市民ギャラリーで開催されている。本展では、「戦争花嫁」と呼ばれる女性たちをとらえた『花嫁のアメリカ 歳月の風景 1978―1998』を紹介。第二次世界大戦の戦中戦後を生きた花嫁たちの姿と言葉を再度提示している。会期は9月1日まで。

江成常夫『花嫁のアメリカ 歳月の風景 1978―1998』より、カズエ・ワッツ(1998)
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 「江成常夫写真展 花嫁のアメリカ 歳月の風景 1978―1998」が、神奈川の相模原市民ギャラリーで開催されている。江成常夫は1936年相模原市生まれの写真家。74年以降、一貫して「負の昭和」をテーマに活動を続けるほか、「フォトシティさがみはら」をはじめとした数々の写真賞の創設に関わっている。これまでに木村伊兵衛賞(1981)や土門拳賞(1985)、毎日芸術賞(1995)、紫綬褒章(2002)を受賞するなど、その評価は高い。

 第二次世界大戦後の50年代、多くの日本人女性が進駐軍の関係者と結婚し、海を渡った。女性たちは「戦争花嫁」と呼ばれ、過酷な経済状況や人種差別、同じ日本人からの蔑視といった様々な困難に遭いながらも、強く美しく生きた。

 江成は、そんな「戦争花嫁」の姿を写し、言葉に耳を傾けた《花嫁のアメリカ》を80年に発表。戦中戦後を生きた女性たちの姿と言葉は、歴史に血を通わせる戦後史の裏打ちと呼べるものとなった。

江成常夫『花嫁のアメリカ 歳月の風景 1978―1998』より、カズエ・ワッツ(1979)

 同作の撮影から20年後の90年代後半、江成は再び花嫁たちのもとを訪れ、撮影を敢行。そこで撮られた写真は、『花嫁のアメリカ 歳月の風景 1978―1998』(集英社、2000)としてまとめられた。相模原市は、2009年に同作の寄贈を受け、市の美術品として収蔵した。

 本展は、新しい元号を迎えた今日、それらを改めて紹介するもの。戦争の時代であった昭和を生き、平成の時代にかけて受け継がれてきた花嫁たちの姿と言葉を、令和という新時代に再度提示している。本展を通じて、現代の国際社会や歴史、家族の在り方を問い直したい。

江成常夫『花嫁のアメリカ 歳月の風景 1978―1998』より、ケイコ・メイヤー(1998)