菅木志雄(すが・きしお)は1944年生まれ。68年に多摩美術大学絵画科を卒業し、60年代末~70年代にかけて起きた芸術運動「もの派」の主要メンバーとして活動。50年以上にわたって一貫した思考で精力的な制作活動を続け、これまで国内外の約400の展覧会で作品を発表してきた。
近年では第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際展「VIVA ARTE VIVA」(2017)で、水上のインスタレーションとして代表作《状況律》を再制作。また2018年には、小山登美夫ギャラリー、8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery、そしてTHE CLUBの3ヶ所で個展を同時開催。現在も、「横浜美術館開館30周年記念 Meet the Collection ―アートと人と、美術館」(6月23日まで)に出展中だ。
「もの派」への再評価が揺るぎないものとなったいまでも、自由かつ鋭敏な感覚で制作を続ける菅。その最新作による個展「測られた区体」が、小山登美夫ギャラリーで開催される。
近年菅は、絵画のキャンバスを思わせる木枠を用いた作品を制作。木枠のなかにはさらに格子状の枠組みがつくられるほか、枠を越えた突起や陥没、異素材の組み合わせといった視覚効果が施されている。一見すると平面的な作品のなかには空間が生まれ、鉄や木、石などありのままのモノによる新たな構造を見ることができる。
菅は本展に際して、「人が何かを手にすると、そこに特別の目的や意図がなくても、それらのものの存在性が確固たるものとして表にでてくるようである。人はある意味でものが発散するエネルギーの方向と動きを測って、<考え>を現場の空間に広げていく。ものの在様や動向に対応していくだけの状況を支える論理をつくっているように思われる。人の思考や意識はずっと続くものではなく必要な場合に応じて選別し、改変して行くことが大事である」と述べる。
それまで認識できなかった世界を表出し、ものや人をめぐる関係性のエネルギーを鮮やかに描き出す菅の作品。75歳を迎える現在もエネルギーに溢れた作品を生み出す、その新境地を目撃したい。