アカデミー助演女優賞を受賞し、『ナルニア国物語』や『グランド・ブダペスト・ホテル』『ドクター・ストレンジ』などの映画作品で知られているイギリスの女優、ティルダ・スウィントン。そのスウィントンが初めてキュレーションした展覧会「Orlando」が、ニューヨークに本社を置くアパーチャー財団のギャラリーで開催されている。
本展のタイトル「Orlando」は、イギリスの小説家・評論家のヴァージニア・ウルフが1928年に発表した小説『オーランドー』から由来するもの。同作は、エリザベス1世統治下のイングランドで生まれた青年貴族・オーランドーが、7日間の昏睡状態から目覚めたあと、自らの身体が女性に変身し、女性として文学的に成功して3世紀暮らしていたという奇妙な物語。92年に映画化された作品『オルランド』には、スウィントンが主役としてオルランドを演じた。
それ以来、ウルフの物語に魅了されたというスウィントンは、『オーランドー』について「魔法の鏡のように変化する能力がある」としている。「私はかつて、それは永遠の若さについての本であると思っていましたが、いまは成長や生きていることについての本として理解しています」。
本展では、スウィントンが小説の中心的テーマであるジェンダーの流動性、限界のない意識、そして長命に対する見方をもとに、開放性、好奇心、そして人間の可能性を探求する写真やテキストを展示。リン・ハーシュマン=リーソン、ウォルター・ファイファー、ヴィヴィアン・サッセン、コーリアー・ショアなど11人の写真家による多彩な作品を紹介する。
スウィントンは、「ウルフは、人間の不確かな本性を称賛する態度で『オーランドー』を書き、創造力が雌雄同体であることを信じていました。私は、本作はジェンダーだけでなく、完全なる感性の目覚めと、その柔軟性に関するものであると思っています」とコメントしている。
また本展の開催にあわせて、スウィントンはアパーチャー財団傘下の写真季刊誌『Aperture』のゲスト・エディターも務める。「今号の『Aperture』は、不確定性や無限性への敬意、そしてここで紹介されたアーティストによって示された、人生の包括的で広大なビジョンに対する心からの祝福となっています」。