日本の美術界を取り巻くジェンダーを考える。シリーズ:ジェンダーフリーは可能か?(プロローグ)

世界経済フォーラム(WEF)による2018年度版「ジェンダー・ギャップ指数」で、日本は「調査対象の149ヶ国中110位」という低順位であることが明らかになったが、日本の美術界の現状はどうか。美術手帖では、全11回のシリーズ「ジェンダーフリーは可能か?」として、日本の美術界でのジェンダーバランスを取り巻くデータ、歴史を整理。そして、美術関係者のインタビューや論考を通して、これからあるべき「ジェンダーフリー(固定的な性別による役割分担にとらわれず、男女が平等に、自らの能力を生かして自由に行動・生活できること)」のための展望を示していく。まずはプロローグとして企画趣旨を掲載する。

ストリートアーティストによるGagoshによる、ジェンダーフリーをテーマとしたグラフィティ 出典=ウィキメディア・コモンズ

 2018年12月18日、世界経済フォーラム(WEF)による2018年度版の「ジェンダー・ギャップ指数」が発表された。男女格差の度合いを示すこの指標で、日本は、「調査対象の149ヶ国中110位」という低い順位にとどまっている。

 美術界では2018年2月、多摩美術大学大学院彫刻専攻に在籍する学生有志が大学と彫刻科にアカデミックハラスメントをはじめとした諸問題に対する要望書を提出。そこには教授陣のジェンダーバランスの不均衡に対する改善要求が含まれていた。いっぽう同年5月には、東京藝術大学にてシンポジウム 「女性のアーティスト・研究者はどのようにキャリアを築いていけばよいのか?」が開催され、そこでは日本の美術系大学における女性上位職の割合、美術館コレクションのアーティスト男女比、ギャラリー所属作家の男女比などが示され、いずれも女性の割合の低さが示されていた。

​ それでは、『美術手帖』はどうだろうか。本シリーズを始めるにあたり、編集部では過去30年の雑誌『美術手帖』で個人特集が組まれたアーティストを調査し、男女比を算出した。その結果、個人特集109回のうち、女性が単独で特集されたのは12回。草間彌生と松井冬子は複数回特集されていたため、人数で算出すると草間、松井、オノ・ヨーコ、コム デ ギャルソン(川久保玲)、蜷川実花、山本容子、トーベ・ヤンソンの7名のみという結果となった。

 「ジェンダー」とは社会的・文化的な性区別のことを指す。そしてその性区別にとらわれずすべての人が平等に、自らの能力を生かして自由に行動・生活できることを「ジェンダーフリー(ジェンダー・イクォリティ、固定的な性別による役割分担にとらわれず、男女が平等に、自らの能力を生かして自由に行動・生活できること)」という。しかし現在の社会の多くではその「ジェンダーフリー」が実現されていない状態であり、世界的に「#metoo」の動きが活発になっているのも、その不平等に対するリアクションの一端と言える。人々が性別の垣根を超え、それぞれの個性や資質に合った生き方を自分で決定するために、まずは現状を見直すべきではないか。

 ウェブ版「美術手帖」ではシリーズ「ジェンダーフリーは可能か?」として、まずは日本のアート界でのジェンダーバランスを取り巻く状況のデータ、歴史を整理。そして、美術関係者(アーティスト、美術館関係者、大学関係者)のインタビューや論考を通して、これからあるべき「ジェンダーフリー」のための展望を示したい。