被写体との親密な関係性を写した作品で知られる写真家の荒木経惟。1970年代より、妖艶な花々や緊縛ヌード、食事、東京の街、飼い猫といった様々な被写体からエロスとタナトスを強く感じさせる独特の写真世界を確立してきた。
荒木はこれまでパリのカルティエ現代美術財団や東京都写真美術館など国内外の美術館で数々の展示を行ってきたほか、520冊以上に及ぶ写真集を刊行。戦後日本の写真界を代表する作家として知られている。
そんな荒木の新作個展「梅ヶ丘墓情」が、六本木のタカ・イシイギャラリー東京で開催される。同ギャラリーは94年に開廊して以来、四半世紀にわたってほぼ毎年荒木の個展を実施。今年で27回目を数える本展では、中判フィルムで撮影したカラーとモノクローム写真の新作約90点を見ることができる。
荒木が現在居を構える「梅ヶ丘」を冠した新シリーズは、その自宅内と周辺で撮影された作品群で構成。被写体の大半を、人形や像、怪獣のオブジェ、花、モノクロームの空が占めるが、写真の間には、妻の陽子やロバート・フランクの写真、いまは亡き父と母、夭折した2人の兄の没年を記したメモなどが挿入されるという。
父と母、そして妻、愛猫チロの死を、被写体として写真に収めることで看取ってきた荒木。今年で79歳を迎える荒木は日増しに体力が衰えているといい、そのレンズを自身に向け始めた。
本展にあわせて、写真集『梅ヶ丘墓情』も刊行される。詳細はギャラリーに問い合わせてほしい。