国内外の雑誌で作品を発表し、日本を代表するフォトグラファーの一人として、90年代よりエディトリアルやファッション・フォトの最前線で活躍してきた鈴木親。東京という街、著名人、有名メゾンから若手のモデルまでを撮影し、その対象が一瞬だけ見せる、パブリック・イメージとは別の奥の部分を引き出している。
ポスト・モダニズム以降、写真表現は多様化し、様々な作家が写真のジレンマに取り組みながらオリジナルの表現方法を模索してきた。鈴木もまた、写真というメディアに正面から向き合う作家であり、現代における消費されては消えていくイメージの氾濫に対抗するように、フィルムカメラで撮影し丁寧にプリントするという、即時性に欠ける方法を用いて写真が持つ「写真らしさ」を取り戻している。
そんな鈴木の個展「わたしの、東京」が、天王洲のKOSAKU KANECHIKAで開催される。本展は、すべてフィルムによる作品で構成。その多くがミディアム・フォーマットやポジフィルムで撮影された新作のポートレイトや東京の風景である。
加えて、昨年に同ギャラリーで開催された個展「晴れた日、東京」に続き、近作の花の作品もセレクトし直して展示。独特の情緒を感じさせる鈴木作品は、写真というメディアがなぜこれまで人々を魅了してきたのか、そしてテクノロジーの進化によって人間の認識がどのように変化したのかということについても再考を促すだろう。