カプーアの新作個展が招く、おおいたの多様な文化。「おおいた大茶会」をレポート
大分県全域を舞台に11月25日まで開催中の「おおいた大茶会」とは、第33回国民文化祭・おおいた2018、そして第18回全国障害者芸術・文化祭おおいた大会の総称だ。そのリーディング事業として別府で行われる「アニッシュ・カプーア in BEPPU」を筆頭に、「おおいた大茶会」の取り組みの一部をレポートで紹介する。
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国民文化祭と全国障害者芸術・文化祭は、開催地域の文化芸術を全国的にアピールする機会として、1986年にスタート。毎年、いずれかの都道府県で開催され、2018年は大分県で開催されている。市町村事業アドバイザーには「in BEPPU」「国東半島芸術祭」などユニークなアートプロジェクトを行ってきたBEPPU PROJECTの代表理事・山出淳也が就任し、現代美術を中心とした「おおいた大茶会」のリーディング事業を展開している。
参加作家の大巻伸嗣は日田市、髙橋匡太は中津市、grafは杵築市、チームラボは宇佐市と、それぞれが大分県の各所で展示やプロジェクトを実施。アニッシュ・カプーアは別府公園にて新作個展「in BEPPU」を開催している。
カプーアは展示を大きく3つに構成し、順番に鑑賞することを要求している。まずは光の99.96パーセントを吸収するペンタブラックを使用した《Void Pavillion V》(2018)の空間、つぎに、飯田高誉キュレーションによる中と外を身体的にとらえた展覧会「コンセプト・オブ・ハピネス」、そして、別府の空を取り込み景色を異化する《Sky Mirror》(2018)の空間だ。おおいた大茶会全体としてこれらを俯瞰したとき、「出会いの場」というエリア──おおいたの玄関口──の象徴として位置付けられている本展は、見えているもの/実在しているもの、内部(県民)/外部(観光客)といった二元軸ではなく、玄関口を経て大分県で展開されるカルチャーツーリズムの新たなあり方を示している。
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また、別府公園の近くではBEPPU PROJECTが継続開催しているアーティスト・イン・レジデ ンスのプロジェクト「KASHIMA 2018」として、田中義久と飯田竜太のアート・ユニット「Nerhol」の個展が行われている。ふたりが滞在制作した別府の個性的な魅力が漂ってくる作品群に注目だ。
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また、ほかのエリアでも注目の展示は多く、土地が本来持つ魅力と併せてぜひ体験してほしい。 日田市では大巻伸嗣の展示に加え、抽象画家の宇治山哲平の回顧展「ぼくらの宇治山哲平」展が複合文化施設AOSEにて開催。日田エリアの地形のダイナミズムを知ることのできる、同施設内、日田市立博物館の展示とともに鑑賞することで、大巻や宇治山がこの地の何に魅力や神秘を感じたのかを読み解くヒントとなる。
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彫塑家・朝倉文夫の生まれ育った豊後大野市にある朝倉文夫記念館では、幅10メートルにおよぶ「巨大 寝ころび招き猫」が展示。1964年の東京オリンピックにあわせて朝倉が計画するも、作家の急逝により中止となった「猫百態」展へのオマージュとして企画された。記念館周辺には「おおいた豊後大野ジオパーク」があるほか、史跡「岡城址」や「隠しキリシタン」といった多数の文化資源を持つ竹田市も隣接する。
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江戸時代の小藩分立により、個性的な文化や歴史、地形に溢れている大分県。おおいた大茶会は、その多様で充実したプロジェクトもさることながら、元来おおいたが持つ魅力を知るきっかけとして機能している。公式プログラムにとらわれず、自由に満喫することをおすすめしたい。
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