ヴァジコ・チャッキアーニは1985年ジョージア・トビリシ生まれの作家。社会的な出来事を示す象徴を扱った彫刻やインスタレーションを制作し、近年では「ヴェネチア・ビエンナーレ2017」にジョージア館の代表として参加。さらに、「The Future Generation Art Prize」のノミネートを受け、ウクライナのピンチュク・アートセンターでの展示が予定されるなど、注目を集めている。
日本初個展となる本展は、歴史の外傷的な体験を経た心理状態を探る作品群で構成される。《Moment in and out of time》は監禁用の独房から外された金属製の扉を扱ったもの。その室内にあった蝋燭で覗き穴を塞ぎ、扉の持つ暴力性を強調する。
また、映像作品《Winter which was not there》では海底から引き上げられた英雄像が引きずり回される様子を写し取り、さらに別の心象風景と合わせることでその含意を深めるものとなっている。
「状況に直接手を下すことなく、ある種の抵抗を生み出すこと」を目的とするチャッキアーニの作品は、ジョージアの時事問題、文学や詩のトピックと交差しながら、孤独、怒り、暴力など個人の心理的な問題を照らし出し、鑑賞者へ強く訴えるものとなっている。