佐藤雅晴は1973年大分県生まれのアーティスト。96年に東京芸術大学美術学部油画専攻を卒業後、99年に同大学大学院修士課程を修了した。2000年から02年にかけては、国立デュッセルドルフクンストアカデミーにガストシュラー(研究生)として在籍した。
09年には「第12回岡本太郎現代芸術賞」特別賞を受賞。11年には「第15回文化庁メディア芸術祭」(アート部門)で審査委員会から推薦を受けた。近年では、原美術館での個展「ハラドキュメンツ10 佐藤雅晴ー東京尾行」(2016)のほか、シドニーとオーストラリアでも個展「TOKYO TRACE 2」(2017)を開催。加えて、ドイツ、ブラジル、イタリア、ニューヨークでのグループ展にも参加するなど、精力的に活動を行ってきた。
「Calling」「ダテマキ」「東京尾行」など、佐藤の代表的シリーズともいえる映像作品は、日常風景をビデオカメラで撮影後、パソコン上でペンツールを用いて慎重にトレースし、さらにそのデータを「ロトスコープ」技法でアニメーション化するという途方もない作業を経て制作される。写実をトレースし、映像化されたモチーフが見せる「リアルでどこか奇妙な動き」は、鑑賞者を、現実と非現実が交錯したような時間に没入させていく。
現在、佐藤は癌と闘い続けている。すでに闘病生活は約8年にわたっており、18年9月には担当医師から余命宣告を受けた。病状の進行に伴う視力の低下などにより映像作品の制作が困難になるなか、その手を止めることなく、平面作品の制作に取り組んできた。
外出もままならず、老朽化によって取り壊しが予定された自宅で静かに過ごす佐藤。一連の作品は、そういった日々のなかでふと目に留まった親しみのある光景や瞬間を切り取り、パネル上に原寸大の絵としてトレースしたものだ。佐藤は、日常風景をビデオカメラで撮影後、パソコン上でペンツールを用いて慎重にトレース。さらにそのデータを「ロトスコープ」技法でアニメーション化している。
今回、東京・新宿のKEN NAKAHASHIで開催される個展「死神先生」では、そのなかから9点を発表。なお、本展と同時期に開催される「六本木クロッシング2019展:つないでみる」(森美術館、2月9日~5月26日)、ACT Vol.1「霞はじめてたなびく」(トーキョーアーツアンドスペース[TOKAS]、2月23日~3月24日)では、佐藤の映像作品が展示される予定だ。