2018.8.4

原爆を語り継ぐ絵画。広島市現代美術館で「丸木位里・俊《原爆の図》をよむ」が開催

原爆による惨状を描いた連作絵画《原爆の図》で知られる丸木位里と俊の夫妻。その絵画的表現を読みとく展覧会「丸木位里・俊 ―《原爆の図》をよむ」が広島市現代美術館で開催される。会期は2018年9月8日~11月25日。

丸木位里・俊 原爆の図 第1部 幽霊(再制作版・部分) 1950-51(後年に加筆) 広島市現代美術館蔵
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 《原爆の図》は、水墨による独自の表現を探究していた丸木位里(1901〜95)と、油彩画を学んだ丸木俊(1912〜2000)が夫婦共同で描いた全15部からなる連作絵画。ふたりは原爆投下後の広島の惨状を見たのち、自らの体験と家族などから聞いた話をもとに《原爆の図》初期3部作である《第1部 幽霊》、《第2部 火》、《第3部 水》を制作した。報道規制が敷かれた時期にもかかわらず、日本全国を巡回し、いち早く人々に被爆の惨状を伝えたことで反核・反戦の象徴となっていく。

丸木位里・俊 原爆の図 第2部 火(再制作版・部分) 1950-51(後年に加筆) 広島市現代美術館蔵

 こうした歴史的背景を持つ《原爆の図》は、作品が担った社会的役割の大きさだけでなく、日本画家・位里による大胆な水墨技法と洋画家・俊の繊細な人体描写が融合しており、「日本画」と「洋画」という枠組みを超えて描かれた点においても希有な作品といえる。

丸木位里・俊 原爆の図 第3部 水(再制作版・部分) 1950-51(後年に加筆) 広島市現代美術館蔵

 本展では《原爆の図》の初期3部作に加え、《第4部 虹》、《第5部 少年少女》とともに、《原爆の図》の需要が高まる全国巡回展中につくられた「再制作版」を同時展示することで作品を多角的に読み取れる。

丸木俊 裸婦(解放されゆく人間性) 1947 個人蔵

 また、丸木位里と俊、それぞれがこれらの作品の前後に単独で制作した作品もあわせて紹介することで、ふたりの画業の連続性のなかで、《原爆の図》にみられる絵画的表現の試みを考察する。

 広島という象徴的な場所から、《原爆の図》の意味を再考できる貴重な機会だ。なお、会期中には原爆の図・丸木美術館主催によるアーティストの奈良美智と東京国立近代美術館企画課長の蔵屋美香による対談などが行われるイベントも企画されている。こちらもあわせて注目したい。