落合多武は1967年神奈川県生まれ。90年の大学卒業後に渡米し、現在はニューヨークを拠点に活動。おもな展覧会に「夏への扉―マイクロポップの時代」(水戸芸術館、2006)、「スパイと失敗とその登場について」(ワタリウム美術館、2010)、「横浜トリエンナーレ2011」(横浜美術館ほか、2011)などがある。
落合は今回の個展で、1年を表す12の新作ペインティングを発表する。異なる背景色のペインティングは、それぞれが各月を表すもの。その上には世界中の国に実在する月の休日・祝日が都市名とともに描かれ、その日に合わせて都市を旅する「旅行程」を示している。
この旅行程は現実的にはほぼ不可能なもの。しかし、それらは言葉と色という限られた要素によって、季節や様々な都市のイメージをまたいで広がる非現実的な時間を表してもいる。
また、落合は制作にあたり、フランシス・ピカビアの1921年の作品《L’Oeil cacodylate(カコジル塩酸の眼)》に形式的な着想を得たという。そこに世界中の休日にまつわる宗教や戦争、人種問題など、様々な問題を巻き込むことで、新たな物語としての旅行程が完成した。
概念をドローイングするように制作を続けてきた落合。改めて「絵画」を日常の視点から変換しようとする作家の柔軟な手つきを、この機会に楽しみたい。