猪瀬直哉は1988年神奈川県生まれのアーティスト。2012年に東京藝術大学絵画科油画専攻を卒業後、15年から16年にかけて、文化庁新進芸術家海外研修員としてロンドンに滞在。17年にはロンドン芸術大学・チェルシーカレッジオブアートで修士号を取得した。現在もロンドンを拠点に活動を行っている。
猪瀬はこれまでに日本とイギリスのほか、韓国、中国、イタリアでのグループ展にも参加するなど精力的に活動を行ってきた。今年は1月から3月にかけて、国立新美術館で開催された「未来を担う美術家たち 20th DOMANI・明日展」にも出品し、注目を集めた。
自然界とそこにおける人間の強欲なあり方、そしてそれによって生み出される不調和な関係性を「絵画」によって探求してきた猪瀬。ロマン派における風景絵画、マーク・ロスコやバーネット・ニューマンらの抽象絵画の色面構成に影響を受け、風景のダイナミズムが落とし込まれた画面には、奥深いアートの文脈も感じうる。
細部まで精巧な風景と抽象的な世界を、油絵の技術でキャンバスに描き出すことによって、人々がどのように自然と向き合っているのかを問い、さらにポストモダニズムにおける絵画の役割、そしてそれがどのように変化しているか考察している。
そんな猪瀬の初個展となる「Blue」が、東京・銀座のTHE CLUBで開催される。本展は展覧会タイトル通り、猪瀬の制作の原点である「ブルー」をテーマに、新作と旧作を回顧展形式で紹介するもの。視覚的に青く溶け込む大気、空、海に飛び込んでいく感覚と、鬱々としたメランコリック的要素が同居した、猪瀬独特の「青」の表情を楽しむことができる。