ジャッキー・サコッチオのアジア初個展。絵具のレイヤーが生み出す「堪えがたいほどの光」とは

画家、ジャッキー・サコッチオのアジア初個展 「Unbearable Lightness ― 堪えがたいほどの光」が、東京・銀座のTHE CLUBで開催される。本展では、身体的な技法と幾層にも重ねられた絵具の層によって構成された11点の新作と2点の版画がならぶ。会期は9月8日〜11月10日。

ジャッキー・サコッチオ Place(Blue Speed) 2018 Courtesy of the artist and Van Doren Waxter, New York

 ジャッキー・サコッチオは、1963年アメリカ・プロビデンス生まれの画家。85年からロードアイランド・スクール・オブ・デザインで絵画を学び、88年にシカゴ美術館附属美術大学大学院を修了した。現在は、ニューヨークとコネチカットを拠点に活動を行っている。

 これまでシカゴ、ニューヨーク、フランクフルトなどで個展を行ってきたほか、ロンドンのヴィクトリア・ミロ・ギャラリーやサーチ・ギャラリーでのグループ展にも参加してきたサコッチオ。その作品は高く評価され、メトロポリタン美術館やダラス美術館をはじめとする世界各国の美術館に収蔵されている。

 サコッチオの制作プロセスは、絵具を滴らせた2枚の巨大なキャンバスを引きずり、擦り合わせることによって、画面上に偶発的に網目模様を出現させ、さらにピクセル状に上塗りを重ねていくという独自のもの。

 その作品は、キャンバスの使い方をもとに大きくふたつのシリーズに分けられる。《Place(Blue Speed)》《Place(Sweep)》を含むシリーズは、暗がりから現れた光の網目模様がキャンバスに引っ張られながらさらなる光を追い求める様子が描かれ、いっぽう《Place(Red Cherries)》を含むシリーズでは、大胆な下地がカラフルな網目模様によって覆われている。

 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの代表作《難破船》の比喩表現、アール・ブリュット(生の芸術)を提唱したジャン=フィリップ=アルチュール・デュビュッフェの筆致、前衛集団「具体」のパフォーマンスペインティング、そしてヘレン・フランケンサーラーの荘厳さに影響を受けたというサコッチオは、自然と規律の関係性を鮮やかに描きだすために、染みを手描きすることによって画面に人為的な身体性を加えている。

 今回、東京・銀座のTHE CLUBで開催される個展「Unbearable Lightness ― 堪えがたいほどの光」は、サコッチオにとってアジア初の個展開催。本展では、身体的で激しい技法と幾層にも重ねられた絵具の層で構成された11点の新作と、2点の版画が展示される。国内外で精力的に活動を続けてきたサコッチオの、新たな試みを目撃したい。

編集部

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