MADSAKI「MADSUCKY WUZ HERE 2018」

　スプレー・ペイントを撒き散らした構図、大衆文化のなかで人から人へと伝えらえる文化やコンセプト、行動を、風刺を効かせてアレンジする唯一無二のスタイルを確立するアーティスト・MADSAKI。大阪に生まれ、ニュージャージーで育ち、スプレー缶を用いるようになったのは日本に帰国してからのことだった。

　最初の作品は数年前に制作された「Beyond Words」シリーズ。アメリカの高校生が口にするような、親しみを込めたからかい文句とも悪意に満ちたあざけりともとれる悪態やジョークは、一見すると雑に取り込まれただけのように思えるが、自分を育てた2つの文化に拒絶された作家の苦い思い、そして日本とアメリカの中間地点になんとか居場所を見つけようという苦闘に由来している。

　続く、影響を受けた巨匠たちをオマージュした「Wannabe」シリーズ、妻のポートレイトからなるシリーズなど、MADSAKIがこれまで生み出してきた作品の多くは、ある種の現実逃避としての役割を果たしていた。

　いっぽう本展は、MADSAKI自身が感じているフラストレーションと素直に向き合うことを自らに課し、過去に気を紛らわせようと生み出した想像上の会話を深く掘り起こすもの。人生のどのような局面にもユーモアを見出すことができるMADSAKIの哲学に焦点を当てる。